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海外の需給動向【牛肉/豪州】 畜産の情報 2021年12月号

牛肉輸出量は増加傾向、 牛群再構築は継続中

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肉牛取引価格は高値更新を継続
 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、10月26日に過去最高となる1キログラム当たり1076豪セント(947円:1豪ドル=88円(注1))を記録した。前月比で45豪セント(40円)、前年比で267豪セント(235円)も上昇しており、依然として高値更新を続けている(図1)。
 

(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の10月末TTS相場。
 

 現地報道によると、MLAや調査会社のアナリストらは、このEYCI価格の推移を異常な経済現象であるとし、特に降雨の影響による牧草肥育業者の購買意欲が関係しているとしている。また、2021年10月に公表されたオーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のレポートによると、EYCI価格の高止まりは、同国で進む牛群再構築の進展に加え、豪州産牛肉に対する海外からの堅調な需要も背景にあるとしている。同レポートでは、過去1年間で牛肉の小売価格が13%以上上昇しているが、これはEYCI価格と連動する傾向があるため、今後、小売価格のさらなる上昇を見込んでいる。



中国向け輸出量は増加傾向も不確実性をはらむ
 豪州農業・水・環境省(DAWE)によると、2021年9月の牛肉輸出量は7万9843トン(前年同月比9.9%増)とかなりの程度増加した(表)。一方、同年1〜9月の累計では66万575トン(前年同期比16.7%減)と依然として大幅に減少しているものの、減少幅は月を追うごとに縮小している。
 


 

 輸出先別に見ると、最大の輸出先である日本は2万1435トン(前年同月比4.6%増)とやや増加し、本年1〜9月の累計(累計期間は以下同じ)では17万7990トン(前年同期比10.5%減)となった。また、日本向け輸出の構成比を見ると、穀物肥育が49.2%、牧草肥育が50.8%となっており、牧草肥育の割合が上昇傾向となっている(図2)。
 続く米国向けは、1万5237トン(前年同月比4.0%減)と前月に比べ減少幅は縮小したものの、累計では10万7907トン(前年同期比37.4%減)と依然として前年を大幅に下回っている。



 

 韓国向けは1万3639トン(前年同月比27.6%増)と大幅に増加し、累計では11万6715トン(前年同期比2.3%増)と、前年同期を超える水準となり、日本に次ぐ輸出量で推移している。
 一方、中国向けは1万2435トン(前年同月比19.7%増)と大幅に増加しているが、累計では10万8776トン(前年同期比30.2%減)と前年を大きく下回って推移している。なお、現地報道によると、豪クイーンズランド州の食肉加工業者であるオーストラリアン・カントリー・チョイス(ACC)社は、寧波にんぽー港入荷の同社製造牛肉での残留薬剤検出を理由に、10月18日付けで中国当局から同国向け牛肉輸出を停止される事態が発生している。昨年来、中国向けの牛肉輸出が停止されている豪州の食肉加工処理場はこれで7カ所目(注2)となっており、引き続き中国向けの牛肉輸出は不確実性をはらんでいる。
 

(注2)詳細は海外情報「中国が豪州の4つの牛肉処理場からの牛肉輸入停止を通告」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002706.html)を参照されたい。なお、2020年5月に輸入停止となった4カ所に加え、同年8月に1カ所、12月に1カ所と、いずれもクイーンズランド州の食肉処理場からの輸入が停止されており、今般のACC社で7カ所目となる。


(調査情報部 国際調査グループ)