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海外の需給動向【牛乳・乳製品/豪州】 畜産の情報  2021年12月号

生乳生産量、 新年度に入り前年同月比で減少が続く

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8月の生乳生産量はやや減少
 デーリー・オーストラリア(DA)によると、2021年8月の生乳生産量は酪農主産地であるビクトリア(VIC)州などで前年同月を下回った結果、69万649キロリットル(71万1368トン相当、前年同月比3.6%減)となった(表1、図1)。特にVIC州南部やタスマニア州、西オーストラリア州では、例年に比べて雨が多く、この時期としては冷涼な気候が牧草の生育に影響を及ぼしていることから、21/22年度(7月〜翌6月)の幕開けとなった7月以降、生乳生産量は前年同月比3%以上の減少が続いている。このため、8月までの累計でも129万7546キロリットル(133万6473トン相当、前年同期比3.6%減)となった。
 しかしながらDAでは、21/22年度の生乳生産量について、これまでと同じく前年度比0〜2%増と予測している(注1)。その理由として、降雨により牧草地の更新が遅れた地域があるものの、春以降の気温上昇により牧草の生育促進が見込まれることや、昨年が豊作だったことで、多くの酪農家にはまだ十分な量の飼料在庫があることなどを挙げている。
 また、豪州農業資源経済科学局(ABARES)は、「Agricultural forecasts and outlook-September quarter 2021」の中で、同年度の生乳生産量を前年度比1.1%増と予測している。増産の要因としてABARESは、十分な降水量に恵まれたことから牧草の良好な生育が期待されることや、経営面でも現地では低金利が予測されていることで酪農設備のメンテナンスや投資拡大が期待されること、また、中国などがけん引する世界的な乳製品需要に後押しされた高い乳価の持続などを挙げている。これらの好条件により1戸当たりの乳用牛飼養頭数は増加が見込まれる一方、記録的な牛肉価格や地価の上昇傾向を受け、一部の酪農家における肉用牛農家への転換や離農も想定されることで、長期的な酪農家戸数減少のトレンドを一時的に加速させる可能性があるとしている。
 

(注1)海外情報「2021/22年度生乳生産見通し、収益は改善も生産は伸び悩み(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002999.html)を参照されたい。





 

豪乳業大手、相次いで生産者支払い乳価を引き上げ
 10月28日および29日、豪州大手のサプート・デイリー・オーストラリア社(以下「豪州サプート社」という)と豪州フォンテラ社は、年度当初(21年7月1日)にいずれも乳固形分1キログラム当たり6.95豪ドル(612円:1豪ドル=88円(注2))としていた乳価(注3)を、それぞれ同7.05豪ドル(620円)および同7.10豪ドル(625円)に引き上げると発表した。年度当初から高水準であった乳価をさらに引き上げる背景について、豪州フォンテラ社は、堅調な需要に対して供給が伸び悩んでいることから国際市場の見通しが明るいこと、また、VIC州などで実施されていたCOVID-19に伴う外出制限が緩和されるにつれ、豪州国内の外食産業が回復し内需が見込めることなどを挙げている。さらに、例年以上の多雨などによる牧草の生育不良で、現在の生乳生産量が予測を下回っているため、今回の乳価の見直しや牧草生育の復調が年度後半の生乳生産の回復につながることを期待していると述べた。
 

(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の10月末TTS相場。

(注3)海外情報「2021/22年度の当初乳価は7ドル前後で幕開け(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002989.html)を参照されたい。
 

脱脂粉乳および全粉乳の輸出は好調
 DAが発表した2021年8月の主要乳製品4品目の輸出量は、脱脂粉乳と全粉乳は増加した一方、バターおよびバターオイルとチーズは減少した(表2、図2)。
 品目別に見ると、脱脂粉乳は、最大の輸出先である中国向けは減少したものの、タイ向けなどその他アジア向け輸出が好調であったことを受け、かなり大きく増加した。また、全粉乳は、中国を含めたアジア向け輸出の伸びなどを受けて大幅に増加した。一方、バターおよびバターオイルは、昨年度(7月〜翌6月)は中国向けの増加にけん引され、すべての月で前年同月を上回ったが、本年8月は、中国向けの減少を受けかなり大きく減少した。また、チーズも、最大の輸出先である日本向けや東南アジア向けの減少を受け、かなり大きく減少した。
 



 

(調査情報部 阿南 小有里)