令和3年10月の生乳生産量、前年同月比3.0%増
令和3年10月の全国の生乳生産量は、63万651トン(前年同月比3.0%増)と、前年を上回って推移している(図1)。地域別に見ると、北海道が35万8648トン(同3.9%増)と前年同月をやや上回った(農林水産省「牛乳乳製品統計」)。都府県についても27万2003トン(同1.8%増)と増加傾向が継続している。東北地域が減少傾向で推移しているものの、関東、東山、東海、九州地域を中心に都府県全体での生産量が増加している。
国産チーズの生産支援について
近年、食の洋風化や健康機能の評価により、チーズの消費量が増加傾向で推移している一方で、チーズの国産割合は減少傾向にある(図2、3)。プロセスチーズ原料用では平成29年度から20%を、総消費量では同年度から15%を、それぞれ下回って推移しており、日EU経済連携協定発効直後の令和元年度の国産割合はプロセスチーズ原料用、総消費量のいずれにおいても過去最低となった。
国産チーズのブランド化、生産・消費拡大に向けてさまざまな取り組みが行われている。その一つに国産ナチュラルチーズのコンテストの開催が挙げられる。オールジャパンナチュラルチーズコンテストは国産ナチュラルチーズの製造技術向上と消費拡大を目的に、一般社団法人中央酪農会議により平成9年度から隔年で開催されており、国内のチーズ生産者から出品された国産ナチュラルチーズを審査し、選出・表彰する。また、チーズプロフェッショナル協会が主催するジャパンチーズアワードは26年から隔年で開催されており、料理家やジャーナリスト、販売・流通の従事者、チーズの生産者などに加え、海外からも審査員を招きさまざまな角度から審査を行っている。
当機構でも支援事業を行っており、国産チーズ生産奨励事業はチーズ向け生乳の品質向上を図る生産者を対象とし、乳質向上などに資する取り組みを実施した上で、要件となる乳質基準を満たした生乳に対して奨励金を交付している。
このような取り組みの結果、プロセスチーズ原料用を除いた国産ナチュラルチーズの生産量やチーズの輸出量は増加傾向で推移している(図4)。
年末年始の処理不可能乳の発生回避に向けて、生産抑制や消費促進などの取り組みを実施
一般社団法人Jミルクは10月26、27日、令和3年度の年末年始需給に係るオンライン説明会を開催した。COVID-19拡大に伴い、昨年のような巣ごもり需要が見られないなど牛乳などの飲用需要が低調に推移し、学乳停止などにより生乳需給が大幅に緩和する年末年始に処理不可能乳が発生する可能性が高まっていることに対し、(1)年末年始に生乳出荷量を一定程度抑制した酪農経営体に対して一定額を助成(2)業界内で危機的状況にあることを共有し、メディア・SNSなどを通して不需要期の消費促進―の二つの対策を打ち出した。
処理不可能乳の発生は生乳生産基盤の弱体化や食品廃棄と受け取られることによる業界イメージの低下につながり、酪農・乳業の発展に大きな障害となりうる。このため、酪農・乳業が連携して、生産抑制に取り組むとともに、12月中旬から新聞広告などにより消費者に対し年末年始の期間の飲用乳を始めとした乳製品の消費促進に対する協力を訴えている。
(酪農乳業部 古角 太進)