令和3年11月の鶏卵卸売価格(東京、M玉基準値)は、1キログラム当たり207円(前年同月比36円高)と前年同月を上回った(図1)。鶏卵卸売価格の動向を見ると、本年は、昨冬の高病原性鳥インフルエンザの発生により採卵鶏の殺処分羽数が多かったことなどから、3月以降、9カ月連続で前年同月を上回って推移している。同価格は、気温の上昇に伴い低下し、夏場の低需要期に底を迎え、年末の需要期に向けて上昇する傾向があるが、本年は、例年とは異なる動向となっている。過去4カ年の11月の同価格を見るといずれの年も前月の価格を上回っているものの、3年11月は前月を6円下回った。しかしながら、日ごとの価格の推移を見ると、月初の同205円から18日には同210円へ上昇し、例年と同様に月内は上昇傾向で推移した。
供給面を見ると、11月以降、高病原性鳥インフルエンザの発生が複数県で確認されているが、全般的には産卵に適した時期を迎え、卵重が増加するなど生産は順調とみられる。
需要面は、鍋物やおでんなどの季節需要の増加、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの影響を受けていた外食需要の回復が期待される。
鶏卵小売価格、7カ月連続で前年同月を上回る
本年の鶏卵の価格動向を見ると、卸売価格(東京、M玉基準値)が3月以降、前年同月を上回って推移する中、小売価格(東京)も5月以降、前年同月を上回って推移し、11月の小売価格(東京)は1パック当たり234円(前年同月比9円高)となった(図2)。なお、本年の各月の小売価格は、9月以降、直近4カ年で最も高値で推移している。また、それぞれの価格の前年同月比の推移を見ると、卸売価格と比べて小売価格の変動は緩やかなものとなっている(図3)。
国産鶏卵の約5割が家計消費用として仕向けられているが、小売価格が高い水準で推移する中、10月の鶏卵の家計消費量(全国1人当たり)は、942グラム(同4.1%減)と前年同月をやや下回った(総務省「家計調査」)。令和3年の月ごとの家計消費量は、2月以降、巣ごもり需要の拡大により消費量が伸びた2年の水準を下回って推移している。ただし、COVID-19発生前の過去5カ年(平成27年〜令和元年)における10月の平均消費量(同902グラム)と比べると40グラム多く、引き続き高い水準となっている。
(畜産振興部 前田 絵梨)