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海外の需給動向【牛肉/中国】 畜産の情報 2022年1月号

堅調な需要から生産量、輸入量ともに増加

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1〜9月の牛肉生産量は前年同期比3.9%増
 中国国家統計局によると、2021年1〜9月の牛肉生産量は、前年同期比3.9%増の468万トンとなった(図1)。また、中国農業農村部は、11月4日に実施した記者会見において、21年の牛肉を含めた肉類全般の生産量について、過去最高を記録する可能性があるとしている。
 牛肉生産量が増加している要因について現地専門家は、国民の所得向上や嗜好しこうの変化などによる需要増加にけん引されたものとしており、政策的に肉牛生産が推進されていることも、国内の牛肉生産の拡大につながっているとしている。なお、中国農業農村部は21年4月、25年までに牛肉および羊肉の自給率(注1)を85%程度にすることなどを盛り込んだ「牛肉と羊肉の生産発展を推進する5カ年行動方案」を発表し、目標達成に向け、優良品種の導入や良質な飼料の供給拡大などを同方案における「重点任務」と位置付け、補助金を手当てするなどの施策を実施している。
 

(注1)現状の牛肉の自給率について公表された数値はないが、2021年4月に公表された「中国農業展望報告(2021−2030)」で示された20年の生産量(672万トン)と消費量(884万トン)から試算すると、同年の牛肉自給率は76%程度と推定される。また、現地専門家からは、おおむね6〜7割程度との意見も聞かれる。



増産傾向にある中、牛肉価格は高値で推移
 牛肉価格は、2019年後半以降、高値安定で推移している。同価格は21年4月以降、一時的にごくわずかな下落傾向も見られたものの、9月に入り再び上昇傾向にある(図2)。このことについて現地専門家は、豚肉価格の下落により一時的に牛肉消費は緩んだものの、夏期休暇明けの学校再開による給食需要や、秋季における気温低下に伴う食肉需要の回復などから牛肉の引き合いが再び強くなったことを挙げている。また、今後の牛肉価格の動向については、需要期となる冬季を迎えることや、依然として飼料価格の高騰が続いていることなどから、上昇傾向は継続すると予測している。
 


 

牛肉輸入量は引き続き増加
 中国では生産拡大を推し進めているものの、国内の供給不足を満たすため、牛肉輸入量は増加傾向にある。
 2021年1〜10月の冷凍牛肉の輸入量は、前年同期比12.0%増の190万6921トンとなった(表1)。冷凍牛肉輸入量に占める国別割合は、最大の輸入先であるブラジルが39.7%(前年同期比0.7ポイント減)と第2位のアルゼンチンの20.4%(同2.4ポイント減)を大きく引き離しているが、9月にブラジルで非定型BSE(牛海綿状脳症)が発生したことを受け、同国から中国への牛肉輸出が一時停止されたため、10月単月での同国からの輸入量は7万4221トン(前年同月比10.9%減)とかなりの程度減少した。
 このような中で中国政府は12月15日、30カ月齢以下の骨なし牛肉に限りブラジルからの輸入再開を公表したため、今後、同国からの輸入量は回復に向かうものとみられる。
 また、アルゼンチンは、自国内の牛肉価格対策として21年5月から牛肉の輸出制限措置を講じてきたが、10月に一部牛肉の中国向け輸出を同制限の対象から除外した(注2)。これにより、7月以降、前年同月比で1〜4割弱減少していた同国からの冷凍牛肉の輸入量が、10月は3万8829トン(同10.2%増)と増加に転じた。この他、21年に入ってから継続的に豪州からの輸入量が減少する一方で、21年1〜10月の米国からの輸入量は前年同期比で約7.5倍と大幅に増加している。
 

(注2)海外情報「アルゼンチン、牛肉輸出制限措置を追加緩和」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003065.html)を参照されたい。
 

 また、絶対量は少ないものの、同期の冷蔵牛肉の輸入量は中国国内の需要増加を受け、前年同期比0.8%増の3万5511トンとなった(表2)。輸入先別に見ると、冷凍牛肉と同様、豪州からの輸入が減少している一方、米国やウルグアイからの輸入は激増している。また、ロシアからの輸入増加やイタリアからの輸入解禁など、輸入先の多角化も積極的に行われている。現地専門家によると、現状の中豪間の貿易摩擦に係るこう着状態は長期化の様相を呈しており、今後数年間はこのような状況が継続する可能性もあるとみられることから、豪州からの牛肉輸入量はさらに減少する一方、その他の国からの牛肉輸入の増加が見込まれるとしている。




 

(調査情報部 阿南 小有里)