ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 豚枝肉卸売価格は、低水準で推移
8月の豚肉生産量は前年同月比3.0%増
欧州委員会によると、2021年8月の豚肉生産量(EU27カ国)は、1頭当たり枝肉重量が前年同月比0.6%減の91.7キログラムとなったものの、と畜頭数が同3.5%増の2049万頭となったことから、同3.0%増の187万8050トンとなった(図1、表)。また、1〜8月の累計では、前年同期をやや上回る1548万トン(前年同期比3.0%増)となった。
同月の生産量を主要生産国別に見ると、EUの豚肉輸出をけん引するスペイン(前年同月比10.6%増)、デンマーク(同12.4%増)、オランダ(同5.9%増)などが前年同月を上回った。一方で、ドイツは、昨年9月に野生イノシシでアフリカ豚熱の発生が確認されて以来、主要輸出先であった中国などアジア諸国を中心に輸入停止措置が続いていることから、同5.0%減の40万1000トンとなった。
なお、ドイツでは本年7月に続き、11月15日、同国北東端に位置するメクレンブルク=フォアポンメルン州で新たに家畜豚でのアフリカ豚熱発生が確認され(注1)、その後、同州では11月25日に野生イノシシでもアフリカ豚熱発生が確認されるなど養豚への影響が懸念されている。
(注1) 海外情報「新たな州で家畜豚のアフリカ豚熱発生(ドイツ)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003096.html)を参照されたい。
10月の豚枝肉卸売価格は、前年同月比6.9%安
欧州委員会によると、2021年10月の豚枝肉卸売価格(EU27カ国)は、前年同月比6.9%安の100キログラム当たり130.6ユーロ(1万6966円:1ユーロ=129.91円(注2))となった(図2)。同価格は、19年は中国におけるアフリカ豚熱の流行による同国向け輸出需要の増加などに伴い、上昇基調で推移していたものの、20年3月のCOVID-19拡大による需要減退や同年9月のドイツでの野生イノシシにおけるアフリカ豚熱の発生を受けて下落傾向で推移していた。その後、COVID-19に関する規制緩和に伴う外食需要などの回復もあり、21年1月以降は上昇基調にあった。しかし、中国国内の豚肉生産の回復に伴い同国向けの輸出量が大幅に減少すると、アジア諸国から輸入停止措置が続いているドイツ産豚肉に加えて輸出先を失った輸出国の豚肉がEU域内で滞留したことなどから6月以降は下落傾向となっている。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2021年11月末TTS相場。
同価格の推移を週ごとに見ると、6月14日の週を境に下落に転じ、10月18日の週に同130ユーロを下回り、その後は低い水準で推移し、直近の11月15日の週は前週比0.1%安の同128.58ユーロ(1万6704円)となった(図3)。
このような状況を受けて、11月には加盟国から欧州委員会に対し、同価格は過去10年間で最も低い水準にあり、養豚生産者の離農を引き起こしかねないことから、共通農業政策による豚肉の民間在庫補助を含む緊急支援を求める要請が行われた。しかしながら、欧州委員会は価格下落の現状を認識しているとしつつも、民間在庫補助などの市場措置を取ることは適切ではないとし、この要請を拒否している。また、欧州でCOVID-19の再拡大によるロックダウンなどの規制が懸念されていることから、今後の同価格の推移が注目されている。
(調査情報部 小林 智也)