9月も乳製品輸出は堅調に推移
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)の「Dairy Data」によると、2021年9月の乳製品輸出は、港湾の混乱など物流面での課題があるにもかかわらず、世界的な需要の高まりを背景に、引き続き堅調に推移した(表)。米国を含めて世界的に乳製品価格が高くなっていること、また、バターやチーズといった付加価値の高い製品の輸出が増加していることで、輸出量、輸出額ともに高い水準となっている。
主な品目を見ると、チーズの輸出量は、3万4100トン(前年同月比19.9%増)と米国産チーズに対する世界的な需要を背景に大きく増加した。特に経済が回復傾向にあるメキシコ向けは堅調となった。メキシコへの輸出は、混乱する港湾を利用せず、トラック輸送が可能であることも増加を促している。米国乳製品輸出協会(USDEC)では、トラックや鉄道を利用した輸出は海上運賃と比べて割高となるが、目的地に遅延なく輸送できるため信頼性が向上するとしている。また、これにより輸出業者、輸入業者双方にとっても魅力が増すことで、他の市場に向けられる予定であった製品がメキシコ向けに転用されることにもつながっているとしている。
バターの輸出量は、3100トン(同107.0%増)と10カ月連続で前年同月を上回っている。ここ数年、米国産乳製品の主要輸出市場となっている中東や北アフリカ向けの輸出が増加していることも一因である。
一方、ホエイの輸出量は、5月が前年同月比30.0%増と大幅に増加したが、8月が前年同月比17.3%減とかなり減少したのに続き、9月は前年同月並と伸び悩んだ。これについてUSDECは、港湾の混乱があるほか、米国産ホエイの主要輸出先である中国向けが、同国の豚肉価格急落により飼養頭数が減少してきたことで、飼料用ホエイの需要が減少していることも一因と分析している。
乳牛経産牛飼養頭数・生乳生産量ともに前年同期比減
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)の「Milk Production」によると、2021年10月の乳用経産牛飼養頭数は前年同月比0.1%減の940万頭となった。飼養頭数は21年5月の950万7000頭をピークに5カ月連続で減少しており、22カ月ぶりに前年同月を下回った(図1)。
また、10月の生乳生産量は、同0.5%減の839万8000トンとなった(図2)。USDAは、ここ数カ月の間、乳価に比べて飼料、労働力、燃料などの投入コストが高いことが生乳生産の伸びに悪影響を及ぼしていると分析している。
減少が続くバター在庫と潤沢なチーズ在庫
USDA/NASSの「Cold Strage」によると、2021年10月のバターの期末在庫量は12万7700トン(前年同月比6.1%減)となり、4カ月連続で減少した(図3)。現地報道によると、クリーム価格の高騰によりバター生産量が抑制されたことに加え、小売業者が12月のクリスマス休暇に備えてバター在庫を確保していることが要因とされている。
一方で、同月のチーズの期末在庫量は、65万8300トン(同8.2%増)と依然として高い水準にある(図4)。例年、チーズの在庫は夏の終わりから秋にかけて減少するが、今年はその傾向から変化している。現地報道によれば、国内外のチーズ需要は高いものの、それを上回る生産がされているとし、過剰な在庫が価格の下落にも影響を及ぼしているとされている。
(調査情報部 上村 照子)