畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 新型コロナウイルス感染症関連の情報

海外情報 畜産の情報 2022年2月号

新型コロナウイルス感染症関連の情報

印刷ページ
調査情報部
 調査情報部では世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、各国政府の対応など需給に影響を与えるタイムリーな情報を、海外情報としてホームページで随時掲載しております。 (掲載URL:https://www.alic.go.jp/topics/index_abr_2021.html)  ここでは、前月号までにご紹介したもの以降、12月末までに掲載したものをまとめて紹介いたします。

【北米】

(令和3年12月15日付)新型コロナウイルス感染症の感染拡大が豚と畜頭数に及ぼした影響(米国)

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)は2021年12月2日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大(以下「パンデミック」という)が豚のと畜頭数に及ぼした影響について、米国50州を10地域に分けて調査を実施し(表1、2、図1)、各地域の豚と畜頭数の推移から分析した結果を公表した。USDA/ERSは、豚肉サプライチェーンの一部を形成する食肉処理・加工施設の回復力について検証を行うことにより、今後の政策立案に反映させていくとした。 
 

1 2020年における豚のと畜頭数の推移

 USDA「Livestock Slaughter 2019 Summary」および「Livestock Slaughter 2020 Summary」によると、パンデミックが始まったとされる2020年4月は、地域1および8を除いたすべての地域で豚のと畜頭数が減少し(米国全体で前年同月比11.1%減)、5月においても減少傾向は続いた(米国全体で同17.8%減)。しかし、6月には地域2、4、8を除き、すべての地域で増加に転じ、米国全体で同11.7%の増加を示した。その後も10月および11月を除いて増加傾向を示し、20年全体では前年比1.2%増となった(図2、表3)。







 
 

2 USDA/ERSの調査・分析結果

 USDA/ERSによる調査・分析結果は以下の通りである。
(1)主要な豚肉生産地の動向(地域3、5、6、7)
 地域3、5、6、7におけると畜頭数の前年同月比は、2020年4月から6月までの間の約5〜7週間に減少し、その後、地域3を除いて回復した。地域3では多くの月で前年同月を下回り、20年の年間と畜頭数も前年を下回る結果になった。
 米国最大規模の食肉処理・加工施設が多く存在する地域5では、20年3月21日の週に1週間当たり81万5100頭であったと畜頭数が4月最終週には同39万9000頭にまで減少した。それにも関わらず、6月までに前年の水準を上回るまでに回復し、20年の年間と畜頭数は前年を上回る結果になった。豚肉の主要産地である地域6および7においても同様に、4月と5月に大きく減少したものの、6月には前年の水準を上回る推移を見せた。

(2)小規模な食肉処理・加工施設が多い地域の動向(地域1、2、9、10)
 地域1は主要な食肉処理・加工施設はなく、と畜頭数も米国全体のと畜頭数全体に占める割合はわずか0.02%にとどまる地域であり、パンデミックによる影響は受けなかった一方で、地域2は豚肉の生産に大きな影響を受けた。2020年3月から5月までの間のと畜頭数は前年同月比で平均56%減少し、その後も回復することはなく、前年同月のと畜頭数を上回ることはなかった。
 地域9では4月と5月に減少することはなく、8月15日の週にわずかに減少したものの、20年の年間と畜頭数も前年を上回る結果になった。地域10においては4月と5月にやや減少し、7月上旬にも減少したが、年間を通じて大きな影響は受けなかった。

(3)USDA/ERSの検証結果
 パンデミックの影響を受けた食肉処理・加工施設の閉鎖や制限により、米国の各地域における豚のと畜頭数は減少したが、その影響の大きさと回復力は地域によって異なる結果となった。
 大規模食肉処理・加工施設がある地域では、当初は影響を受けたものの、主要施設が労賃引き上げ・ボーナス給付、COVID-19検査体制強化、従業員用防護服の提供など従業員の労働環境改善、土曜日の稼働時間拡大・と畜量増加などに迅速に対応することで、短期間で2019年の水準まで回復した。一方で、小規模な食肉処理・加工施設が存在する地域では主要な豚肉産地と比較して早い回復は見られなかった。地域における食肉処理・加工施設の回復力を理解するためには、施設レベルでの分析が必要になるだろう。

【調査情報部 国際調査グループ】

【アジア】

(令和3年12月28日付)2021年畜産物消費実態調査結果を公表(韓国)

 韓国農村振興庁は12月6日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響下における同国の食肉消費の変化などをまとめた「2021年畜産物消費実態調査」の結果を公表した。
 本調査は、コロナ禍での畜産物の消費環境の変化や食肉需要を分析し、マーケティングの効率化、畜産物に関する研究、畜産農家の経営的支援等に活用することを目的としている。調査は国内在住の20〜69歳の1500人を対象に、オンラインによるアンケート方式で実施された。以下に本調査の結果概要を紹介する。 
 
●食肉摂取頻度
 主要な食肉のうち、1週間に1回以上食べる消費者が最も多いのは豚肉(69.5%)で、次いで、鶏肉(55.1%)、牛肉(44.9%)と続く。
 
●食肉消費量の変化
 2021年の牛肉消費については、国産牛肉、輸入牛肉ともに「前年よりも増加した」と回答した割合が「前年よりも減少した」と回答した割合を上回った(図1、2)。また、「輸入牛肉の消費が増加した」と回答した割合は「国産牛肉の消費が増加した」と回答した割合を3.4%上回った。輸入牛肉消費が増加した理由としては「価格」と回答した人の割合が最も多く、次いで、「おいしさ」「品質」「原産地」などが挙げられている。



 
 豚肉消費については、国産豚肉で「前年よりも増加した」と回答した割合が「前年よりも減少した」と回答した割合を上回った。一方、輸入豚肉では、「前年よりも増加した」と回答した割合が「前年よりも減少した」と回答した割合を下回った(図3、4)。

 

●食肉消費形態の変化
 食肉の消費形態は、いずれも「家庭内消費」が最も多く、「外食」は20%以下、調理材料が一緒に入ったミールキットや食事宅配サービス(いわゆる、出前など調理から宅配まで自社で行うもの)は10%台前半となった(図5、6、7)。また、オンラインサイトなどから注文するフードデリバリーは、牛肉、豚肉ともに10%程度であったが、持ち帰り用途のメニューが多い鶏肉は30%と他の食肉より多い割合を示した。
  「家庭内消費」の割合が最も高いのは豚肉で、次いで牛肉、鶏肉となった。牛肉、豚肉、鶏肉いずれも、前年に比べて「家庭内調理」が増加し、「外食」が減少する傾向が見られるが、この傾向は主に牛肉、豚肉で顕著となった(表1、2、3)。









 



●食肉購入場所および方法の変化
 COVID-19の影響による食肉購入場所および方法の変化が「ある」と回答したのは18.7%で、オンラインでの購入が「前年に比べて増加した」と回答した人の割合は「前年に比べて減少した」を大きく上回った。一方、精肉店や生産者直売所、デパートなどでの購入は下回った(図8)。
 本調査では、COVID-19の影響下で、国内産畜産物の消費にも大きな影響が及んだことが明らかになったとされている。また、今後の課題として、相対的に少なかった食肉のオンライン購入が大きく増加したことで、オンライン購入に適した商品の開発や流通方法の改善が必要であるとされている。

【調査情報部 海老沼 一出】