農林水産省は、令和3年12月17日、「畜産物生産費統計(令和2年)」を公表した。品目ごとの内容は以下の通りである。
【肥育牛】肥育牛生産費は、交雑種肥育牛および乳用雄肥育牛で増加
1. 去勢若齢肥育牛
去勢若齢肥育牛の1頭当たり資本利子・地代全額算入生産費(以下「全算入生産費」という)は、133万6382円(前年比0.0%減)となり、前年並みとなった(表1、図1)。費目別に見ると、費用合計の62.5%を占めるもと畜費は83万447円(同1.6%減)と前年をわずかに下回った一方、25.2%を占める飼料費は33万4711円(同3.4%増)と前年をやや上回った。
なお、1頭当たりの販売価格は、120万5545円(同9.5%安)と前年をかなりの程度下回った。
2. 交雑種肥育牛
交雑種肥育牛の1頭当たり全算入生産費は、82万8217円(同4.2%増)となり、前年をやや上回った。(表1、図1)。費目別に見ると、費用合計の55.1%を占めるもと畜費は45万5172円(同12.2%増)と前年をかなり大きく上回った一方、34.9%を占める飼料費は28万8525円(同3.2%減)と前年をやや下回った。
なお、1頭当たりの販売価格は、69万1713円(同13.5%安)と前年をかなり大きく下回った。
3. 乳用雄肥育牛
乳用雄肥育牛の1頭当たり全算入生産費は、54万5428円(同2.0%増)となり、前年をわずかに上回った(表1、図1)。費目別に見ると、費用合計の48.7%を占めるもと畜費は26万4912円(同4.5%増)と前年をやや上回った一方、39.9%を占める飼料費は21万6993円(同1.3%減)と前年をわずかに下回った。
なお、1頭当たりの販売価格は、49万7711円(同2.6%安)と前年をわずかに下回った。
費用合計に占める割合はもと畜費が最も大きく、もと畜費の増加が交雑種肥育牛および乳用雄肥育牛の生産費の増加につながっている。それぞれのもと畜費を見ると、去勢若齢肥育牛は直近10年間において3番目に高く、交雑種肥育牛および乳用雄肥育牛は最も高い水準となった(図2)。
なお、1頭当たりの販売価格は、3品種すべてで前年水準を下回った。特に、去勢若齢肥育牛および交雑種肥育牛は、COVID-19の影響による外食需要の減少などにより下落幅が大きくなったとみられる。
飼養規模ごとの肥育牛1頭当たりの費用合計を見ると、おおむね規模が大きい経営で費用合計が低くなる傾向が見られる(図3、4、5)。
品種ごとに「10〜20頭未満」以上の区分について見ると、去勢若齢肥育牛の費用合計が最も高いのは「50〜100頭未満」の142万3145円、最も低いのは「200〜500頭未満」の127万9376円で、その差は14万3769円となった。交雑種肥育牛の費用合計が最も高いのは「20〜30頭未満」の90万6293円、最も低いのは「200〜500頭未満」の81万749円で、その差は9万5544円となった。乳用雄肥育牛の費用合計が最も高いのは「10〜20頭未満」の62万5197円、最も低いのは「500頭以上」の52万6135円で、その差は9万9062円となった。
【肥育豚】飼料費などの減少により、肥育豚生産費は減少
肥育豚の全算入生産費は、3万3622円(前年比0.6%減)と前年をわずかに下回った(表2、図6)。費用合計の59.9%を占める飼料費は2万292円(同3.2%減)と前年をやや下回り、14.1%を占める労働費は4761円(同0.1%減)と前年並みとなった。
なお、肥育豚1頭当たりの販売価格は、3万8723円(同5.7%高)と前年をやや上回った。これは、COVID-19の影響により巣ごもり需要が旺盛となったことによるものとみられる。
飼養規模ごとの費用合計を見ると、規模が大きい経営ほど費用合計が低くなっている(図7)。費用合計が最も高いのは「1〜100頭未満」の5万4668円、最も低いのは「2000頭以上」の2万9706円で、その差は2万4962円となった。なお、「1〜100頭未満」は、ほかの区分に比べ、飼料費および労働費が特に高くなっている。
(畜産振興部 前田 絵梨)
【牛乳生産費】令和2年の牛乳生産費、前年度比4.0%増
全国の搾乳牛1頭当たりの全算入生産費は、82万8207円(前年比4.0%増)とやや増加した(農林水産省「令和2年牛乳生産費」、表3、図8)。地域別に見ると、北海道は、77万9887円(同3.9%増)とやや増加し、都府県も、88万8759円(同4.1%増)とやや増加した。費用合計は、物財費と労働費に大別され、令和2年でのそれぞれの割合は、82.5%と17.5%となった。さらに、物財費のうち、特に大きな割合を占める飼料費は全国、北海道および都府県いずれにおいても前年を上回った。
1頭当たりの労働時間は、全国平均では96.88時間(同2.7%減)と、統計開始以降初めて100時間を下回った前年から引き続き短縮されており、北海道では85.19時間(同1.4%減)で、都府県においても111.55時間(同3.7%減)となった。
(酪農乳業部 小木曽 貴季)