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海外の需給動向【牛肉/豪州】 畜産の情報  2022年2月号

2021年の肉牛取引価格、年間を通じて最高値更新が継続

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2021年末の肉牛生体取引価格も過去最高を記録  
 肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2021年最後の取引となる12月16日に、過去最高となる1キログラム当たり1169豪セント(994円:1豪ドル=85円(注1))を記録した(図1)。これは、20年末の終値から同300豪セント以上の上昇となっている。
 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2021年12月末TTS相場。


 
  21年は、さまざまな専門家らが報道各社などに対してこのEYCI価格の見通しに関する見解を述べていたが、何度もこれらの予想を裏切り、価格は過去最高を記録し続けた。現地報道によると、肉用牛主要飼養地であるクイーンズランド州を中心に、広範囲にわたって降雨があり、牧草の生育が良好で潤沢にあることから、肥育農家が多く牛を入手しようとするため、今後2〜3カ月は若齢牛をはじめとした牛への高い需要が継続するとされている。また、EYCI価格上昇と同時に、取引頭数も11月末ごろから約1.7倍に増加していることについて、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は、牛の需要が供給を大きく上回っていることを示唆しているとしている。

2021年の成牛と畜頭数は、年間を通して低位で推移  
 MLAによると、2021年の成牛と畜頭数(週間報告)は、年間を通じておおむね9〜10万頭で推移した。21年12月第1週は8万9972頭(前年同月同週比21.8%減)と前年同期の約8割となっており、2年前の同月同週(16万118頭)との比較では43.8%減と大幅に減少している(図2)。なお、MLAの長期見通しによると、今後の牛群再構築の進展により、徐々にと畜頭数も増加するとしている(注2)

 
 (注2)『畜産の情報』2022年1月号「牛群再構築は2022年まで継続と予想」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001926.html)を参照されたい。 



韓国向け牛肉輸出、セーフガード基準数量が迫るも在庫確保の動きにより増加  
 豪州農業・水・環境省(DAWE)によると、2021年11月の牛肉輸出量は7万5712トン(前年同月比5.3%減)とやや減少した。一方、同年1〜11月の累計(累計期間は以下同じ)では81万8824トン(前年同期比14.2%減)とかなり大きく減少している(表)。
 輸出先別に見ると、最大の輸出先である日本向けは2万239トン(前年同月比20.4%減)と大幅に減少し、累計でも21万6999トン(前年同期比12%減)となった。また、日本向けの内訳は、穀物肥育牛肉が56.2%、牧草肥育牛肉が43.8%を占めた(図3)。
 続く韓国向けは、1万8238トン(前年同月比10.1%増)とかなりの程度増加し、累計では14万9872トン(前年同期比3.7%増)となった。また、前月(1万4920トン)比でも22.2%増と大幅に増加している。現地報道では、豪韓FTAに基づく21年のセーフガードの発動基準数量である17万7569トンに近づく中、韓国の輸入業者が牛肉在庫の確保に動いたことを大幅増の要因として挙げている。


 


 このような中、21年12月17日に豪州と英国は同年6月に合意したFTAに署名し、22年中の発効が予定されている(注3)。豪州食肉産業協議会(AMIC)はこの署名を歓迎・支持する声明を出しており、世界的な食肉需要の高まりを背景に、協定発効後の豪州産牛肉の輸出動向が注目される。 

(注3)海外情報「英国政府、英豪FTAの合意内容の概要を発表」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002976.html)を参照されたい。


 (調査情報部 国際調査グループ)