2021年の牛肉生産量は2年連続で減少見込み
米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、2021年のブラジルの牛肉生産量は、前年比5.9%減の950万トン(枝肉重量ベース)と、2年連続での減少が見込まれている(図1)。これは、2018〜19年にかけて、輸出向け需要の増加などにより雌牛のと畜が増加した影響で、と畜対象となる個体数が減少したためである。また、特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響から消費者の所得が減少する中で、食肉処理業者などが、高値で推移する肉用牛の仕入コスト上昇分を小売価格に十分転嫁できない状況にあることも生産減の一因とみられている。
2021年輸出量、中国向け輸出停止の影響で減少に転じる見込み
ブラジル経済省貿易局(SECEX)によると、2021年1〜11月の冷蔵・冷凍牛肉の輸出量は、143万3302トン(前年同期比9.4%減、製品重量ベース)と前年同期をかなりの程度下回った(表)。
これは、9月4日にブラジルで非定型BSEの発生が確認され、一時的に中国などへの輸出停止措置が講じられた影響が大きい。特に中国向けは、10〜11月の輸出量が激減したことから、71万6138トン(同8.2%減)と前年同期をかなりの程度下回った。なお、中国向け輸出停止措置は、12月15日に解除されている。
そのほかの主な輸出先を見ると、チリ、米国、アラブ首長国連邦向けは、前年同期より大幅に増加した。特に米国向けは17年6月、ブラジル産牛肉の一部に安全性の問題があるとして生鮮牛肉(冷蔵・冷凍)の輸出が停止されたが、20年2月に輸出が再開し、前年同期比3.2倍増の6万712トンと、中国、香港、チリに次ぐ4番目の輸出先となった。
なお、ブラジルの年間ベース(1〜12月)での牛肉輸出量は、17年以降4年連続で前年比10%程度増加していたが、21年は中国向けの減少が大きく影響し、全体で減少に転じると見込まれている。
肉用牛価格は堅調な輸出需要を背景に記録的な高値で推移
直近のと畜向けの肉用牛価格は、一時的に牛肉輸出量が減少したものの、堅調な輸出需要を背景に記録的高値で推移している。最近の価格動向を見ると、中国におけるCOVID-19の影響により2020年1月中旬から2月上旬にかけて1キログラム当たり12レアル(252円、1レアル=21円
(注))台に下落しが、6月ごろから上昇傾向で推移し、同年11月には同19レアル(399円)台と前年同月比で6割程度価格が上昇した。その後、20年末から21年初にかけて一時的に、また、9月に非定型BSEの発生が確認されたことで大きく下落したが、その後持ち直し、直近12月21日時点では同21.85レアル(459円)と記録的な高値で推移している(図2)。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」2021年12月末TTS相場。
(調査情報部 井田 俊二)