畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 堅調な需要に後押しされ、生乳生産量、輸入量ともに増加

海外の需給動向【牛乳・乳製品/中国】 畜産の情報  2022年2月号

堅調な需要に後押しされ、生乳生産量、輸入量ともに増加

印刷ページ
2021年の生乳生産量は過去最高の可能性
 中国国家統計局によると、2021年1〜9月の生乳生産量は、前年同期比7.9%増の2514万トンとなった(図1)。また、中国農業農村部は、11月4日に開催された記者会見で、21年の生乳など(牛由来の生乳のほか、ヤギやヤクなど由来の乳を含む。以下同じ)の生産量は過去最高を記録する可能性があると発表した。 
  生乳生産の伸びが予測される中で、中国農業農村部は12月14日、今後の畜産振興政策の柱となる5カ年計画(注1)を公表した。この中で酪農については、25年までに生乳などの自給率(注2)を70%以上に引き上げることや、乳製品の品質と安全性の向上などを目標に掲げている。これらの目標達成に向け、家畜の飼養・疾病管理の強化、コールドチェーンの整備などを推進するとしており、引き続き酪農・乳業を強力に振興していくという姿勢を見せている。 

(注1)「<十四五>全国畜牧獣医行業発展規画」(2021年農牧発37号)を指す。

(注2)現状の生乳などの自給率について公表された数値はないが、2021年4月に公表された「中国農業展望報告(2021−2030)」で示された20年の生産量(3546万トン)と消費量(5354万トン)から試算すると、同年の生乳などの自給率は66%程度と推定される。
 

 
生乳価格は年間を通して高値で推移
 生乳生産量が増加している中で、乳製品需要が引き続き堅調なことなどから、2021年12月の生乳価格は1キログラム当たり4.32元(79円:1元=18.4円(注3))と高値を維持している(図2)。同年の生乳価格は、1月に同4.2元(77円)を超えて以来、年間を通してこの水準を超える高値で推移している。
 今後の生乳価格の動向について、飼料コストは引き続き高値で推移すると見込まれること、また、春節(22年は1月31日から2月6日)に向けた乳製品需要の高まりが予想されることから、生乳価格も引き続き高値で推移するとみられる。現地専門家からは、こうした流れを受け、春節に向けて生乳価格はこの水準よりさらに10%程度上昇する可能性があるという意見も出ている。
 
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2021年12月末TTS相場。
 

 
乳製品輸入量は一部を除き昨年の年間実績を上回って推移
 堅調な需要を背景に、2021年1〜11月の主な乳製品輸入量はおおむね増加傾向にある。ただし、ヨーグルトと育児用調製粉乳(以下「育粉」という)は、前年同期比でそれぞれ減少し、特に育粉は同2割以上の減少となっている(表)。この要因について現地専門家は、最近の傾向として、ヨーグルトなどは消費者の志向が国産の製品にシフトしていることに加え、育粉は新生児数の減少から需要量自体も減少していることを挙げている。このため、国内の育粉製造業者の一部は、ヤギ乳を使用した育粉や成人向け粉乳(高齢者などを対象とした栄養素を添加したもの)など、消費者層の変化を踏まえニッチな市場に目を向け始めているという。また、特に育粉の輸入量減少については、留学生による「代購」と呼ばれる代理購入による現地発送や、旅行者などが持ち帰ってくる「ハンドキャリー」分が、コロナ禍で大きく減少したためとする専門家もいる。 
  一方、全粉乳、脱脂粉乳、飲用乳、チーズ、バターおよびホエイは、いずれも前年同期より大幅に増加しており、11月時点ですでに昨年の年間輸入実績を上回っている。さまざまな商品の原料となる全粉乳および脱脂粉乳に注目すると、中国国内の生乳価格の高止まりによる国内外の原料価格差の拡大から、一部乳業が生産コストを意識して輸入粉乳にシフトしているとされている。現地専門家によると、国内の生乳価格が引き続き高い水準にあるため、乳業による輸入需要は依然として大きく、21年の全粉乳と脱脂粉乳の輸入量は、2品目合計で前年を大きく上回る140万トンを超えるとみている(参考:20年の全粉乳と脱脂粉乳を合計した輸入実績は97万9000トン)。
 


 (調査情報部 阿南 小有里)