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海外の需給動向【牛肉/米国】 畜産の情報  2022年3月号

肉用牛の繁殖雌牛飼養頭数、7年ぶりの低水準

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12月の牛肉生産量、前年同月比1.5%増
 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)が毎月更新する「Livestock & Meat Domestic Data」によると、2021年12月の牛肉生産量は107万1000トン(前年同月比1.5%増)と前年同月をわずかに上回った(図1)。この生産量の増加は、と畜頭数の増加が一因とされている。これは、米国西部などでの干ばつに伴う牧草の生育状況の悪化などにより、経産牛や種雄牛のと畜が増えたためで、同月のと畜頭数は前年同月比1.4%増となった。この結果、21年の年間牛肉生産量は1267万2000トン(前年比2.8%増)と前年からわずかに増加した。なお、同年の1頭当たりの枝肉重量は前年並み(同0.1%減)となった一方、と畜頭数は同3.2%増となった。


総飼養頭数、前年比2.0%減
 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が公表した「Cattle」によると、1月1日時点の牛総飼養頭数は9190万2000頭と前年比2.0%減となった(表1)。内訳を見ると、肉用牛の繁殖雌牛は7年ぶりの低水準となる同2.3%減の3012万5000頭、肉用繁殖後継牛は同3.3%減の561万2000頭と減少した。現地報道によると、干ばつによる牧草の生育状況の悪化などを受けて、生産者が繁殖後継牛を淘汰とうたした影響が大きいとしている。
 一方で、オミクロン株の流行により、タイソンフーズ社や米国JBS社など大手パッカーの労働者の欠勤率が上昇しており、食肉処理場の稼働に支障を来すなどサプライチェーン(供給網)の課題となっている。さらに、飼料コストの上昇が生産者の収益を圧迫し、生産者の増頭意欲は限定的なものとなっている。
 干ばつに伴う一時的な出荷頭数の増加が一段落した後、牛肉生産量が減少し、今夏以降の牛肉需給がひっ迫傾向となる可能性が高いことから、現地関係者の間では、当面の間は牛肉価格の高騰が続くのではないかとされている。


1〜11月の牛肉輸出量、前年同期比18.3%増
 1〜11月の牛肉輸出量を主要輸出先別に見ると、USMEFなどの分析では、最大の輸出先である日本向けは、外食需要の低迷から冷凍品が減少した一方、好調な小売需要に支えられた冷蔵品が伸びたことから、全体では34万6400トン(前年同期比0.2%増)となった。2番手の韓国向けについては、米韓自由貿易協定に基づく関税引き下げが追い風となる中、日本と同様、冷凍品が伸び悩む一方、冷蔵品が大きく増加しており、全体では33万200トン(同17.7%増)となった。
 中国向けは、20年2月に発効した米中経済貿易協定第1段階合意以降、豪州産からの代替需要と現地の好調な食肉需要を背景に記録的な水準が続いており、22万2800トン(同5.3倍)と大幅に増加した。4番手のメキシコ向けは、11月は前年同月実績が多かったことから、その反動で大幅に下回ったものの、13万600トン(同7.0%増)と前年同期をかなりの程度上回った(表2、図2)。




(調査情報部 河村 侑紀)