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海外情報 畜産の情報 2022年3月号

新型コロナウイルス感染症関連の情報

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調査情報部
 調査情報部では世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、各国政府の対応など需給に影響を与えるタイムリーな情報を、海外情報としてホームページで随時掲載しております。 (掲載URL:https://www.alic.go.jp/topics/index_abr_2021.html
 ここでは、前月号までにご紹介したもの以降、1月末までに掲載したものをまとめて紹介いたします。

【北米】

(令和4年1月7日付)米政府、西海岸の余力港湾の活用と輸出入のバランス回復を要請(米国)

 米国運輸省(USDOT)および農務省(USDA)は2021年12月16日、米国西海岸の港を利用する主要な海上輸送企業に対して、両省長官名の書簡を発出し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって生じたサプライチェーンの混乱を解消するよう要請した。
 

1 USDOTおよびUSDAによる要請内容

(1) 余力のある港湾の活用
  COVID-19によって、世界中の物流に前例のない混乱が生じたことを踏まえ、政府と産業界は、あらゆる手段を講じて既存のインフラを最大限に活用すると同時に、将来も見据えてサプライチェーンの回復力を高める必要がある。そして、既存のインフラを最大限に活用するためには、混雑しているロサンゼルス港やロングビーチ港ではなく、余力のあるオークランド港、ポートランド港などの他の港湾を活用すべきである。特に、外国籍のアジア向け輸送船によるオークランド港の抜港が相次いだことで、輸出業者は米国産農畜産物を混雑しているロサンゼルス港やロングビーチ港までトラック輸送して輸出せざるを得なかった。しかし、オークランド港への寄港を再開することで、ロサンゼルス港やロングビーチ港の混雑が緩和され、長距離トラック輸送の負担も軽減され、米国産農畜産物の迅速な輸出も可能になるだろう。

(2) 輸出入の相互バランスの回復
  貿易本来の輸出入の相互バランスの回復も重要であるが、多数のコンテナが空の状態でアジア地域に返送されている。これによるコンテナ不足が米国産農畜産物の輸出を妨げ、港湾混雑の原因にもなっている。さらに輸出業者には、コンテナ利用に係る手数料の発生など不当な対応が求められてきた。このような不均衡は持続可能ではなく、利用可能な多数の空コンテナがあるにもかかわらず、米国輸出業者のコンテナ利用の拒否などが行われることは受け入れ難いものである。これらが早急に解決されなければ、米国連邦海事委員会(FMC)によるさらなる調査と措置が必要になるだろう。
  特に、(2)については、FMCの権限強化などを盛り込んだ米改正海運法案が2021年12月8日に米国下院を通過したこと(注)を背景として、海上輸送企業に通達したものと推察される。

 (注)米改正海運法案については、海外情報「海上輸送の管理等強化を目的とした米改正海運法案が下院を通過(米国)」を参照されたい。
 

2 外国籍船舶によるオークランド港の抜港と寄港再開の流れ

 2021年に入り、複数の外国籍船舶がロサンゼルス港およびロングビーチ港の港湾混雑を回避するため、オークランド港での船積みを決定した。しかし、労働力不足などの問題によって同港でも混雑が生じているとし、2021年6月以降、ドイツを拠点とするHapag-Lloyd社、フランスを拠点とするCMA CGM社、イスラエルを拠点とするZim社などが相次いで抜港を決定した。
  一方で、オークランド港は同年10月、海上輸送企業に対して、同年8月以降、船舶の滞留は発生しておらず、港湾のコンテナ取扱量に余裕があるとして、米国西海岸のサプライチェーン停滞の緩和に向けて、同港に寄港するよう呼び掛けた。同港の同年12月15日の発表によると、海上輸送企業が11月に入り、徐々に同港への寄港を再開したことにより、11月のコンテナ輸入量は前年同月比で約6.5%増加、2021年1〜11月までのコンテナ輸入量は前年同期比で約8.0%増加した(図)。


【調査情報部 国際調査グループ】

【欧州】

(令和4年1月28日付)欧州委員会、欧州豚肉部門への支援策について検討を約束(EU)

 2022年1月17日に開催されたEUの閣僚理事会でチェコ代表部は、欧州豚肉部門の「危機的状況」に対処するために共通農業政策(CAP)の市場施策(CMO)に基づく支援策を要請した。なお、同理事会ではCAPで認められている市場介入措置の発動の要請を3回続けて却下している(注1、2)
 今回の要請を受けて、EUのボイチェホフスキ農業担当委員は、1月31日に行われる農業特別委員会(SCA)において、欧州豚肉部門への適切な支援について議論すると約束した。

(注1)欧州委員会、豚肉の市場介入措置の発動要請を3回連続で拒否(EU)(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003140.html)を参照されたい。

(注2)EUでは、2016年1月に季節的な要因やロシア禁輸措置の影響などから民間在庫補助が発動されたものの、それ以降、豚肉の市場介入は行われていない。

 

 今回の閣僚理事会でチェコ代表部は、「豚枝肉卸売価格は驚くほどの低水準に悩まされており、生産コストを下回っている」とし、「アフリカ豚熱や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響がある中、エネルギーや飼料価格の高騰が生産コストをさらに押し上げている」と主張した。
 閣僚理事会の議長国であるフランスは、「多くの代表部がチェコ代表部の意見に同調し、それらの加盟国では大きな懸念がある」とし、次回のSCAで、欧州豚肉部門への支援が可能な対策を提示するよう欧州委員会に求め、どの解決方法が適切かを決定すると述べた。
 現地報道によると、昨年末までに閣僚理事会は、豚肉の市場介入措置の発動要請を3回続けて却下していたため、今回の要請が保留されたことを業界では驚きを持って受け止められている。
 ボイチェホフスキ農業担当委員は、子豚価格の10月からの上昇や豚枝肉卸売価格の12月からの上昇が継続しているなど、市場に改善の兆しが見られると指摘しながらも、豚肉部門がCOVID-19による外食部門の需要減退やアフリカ豚熱による輸出市場の喪失などの影響を受けているとした。一方で、豚肉部門は乳製品と異なり、豚肉生産の大部分が一部の生産者によって生産されているため、すべての加盟国がこの状況を懸念している訳ではないとした。こうしたことから、危機的状況に対して単一の解決策はないとし、市場介入措置の発動は最良の選択肢ではないとしながら、さまざまな支援策の長所と短所を含め検討すると述べた。

 
【調査情報部 小林 智也】