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2022年1月17日に開催されたEUの閣僚理事会でチェコ代表部は、欧州豚肉部門の「危機的状況」に対処するために共通農業政策(CAP)の市場施策(CMO)に基づく支援策を要請した。なお、同理事会ではCAPで認められている市場介入措置の発動の要請を3回続けて却下している(注1、2)。
今回の要請を受けて、EUのボイチェホフスキ農業担当委員は、1月31日に行われる農業特別委員会(SCA)において、欧州豚肉部門への適切な支援について議論すると約束した。
(注1)欧州委員会、豚肉の市場介入措置の発動要請を3回連続で拒否(EU)(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003140.html)を参照されたい。
(注2)EUでは、2016年1月に季節的な要因やロシア禁輸措置の影響などから民間在庫補助が発動されたものの、それ以降、豚肉の市場介入は行われていない。
今回の閣僚理事会でチェコ代表部は、「豚枝肉卸売価格は驚くほどの低水準に悩まされており、生産コストを下回っている」とし、「アフリカ豚熱や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響がある中、エネルギーや飼料価格の高騰が生産コストをさらに押し上げている」と主張した。
閣僚理事会の議長国であるフランスは、「多くの代表部がチェコ代表部の意見に同調し、それらの加盟国では大きな懸念がある」とし、次回のSCAで、欧州豚肉部門への支援が可能な対策を提示するよう欧州委員会に求め、どの解決方法が適切かを決定すると述べた。
現地報道によると、昨年末までに閣僚理事会は、豚肉の市場介入措置の発動要請を3回続けて却下していたため、今回の要請が保留されたことを業界では驚きを持って受け止められている。
ボイチェホフスキ農業担当委員は、子豚価格の10月からの上昇や豚枝肉卸売価格の12月からの上昇が継続しているなど、市場に改善の兆しが見られると指摘しながらも、豚肉部門がCOVID-19による外食部門の需要減退やアフリカ豚熱による輸出市場の喪失などの影響を受けているとした。一方で、豚肉部門は乳製品と異なり、豚肉生産の大部分が一部の生産者によって生産されているため、すべての加盟国がこの状況を懸念している訳ではないとした。こうしたことから、危機的状況に対して単一の解決策はないとし、市場介入措置の発動は最良の選択肢ではないとしながら、さまざまな支援策の長所と短所を含め検討すると述べた。
【調査情報部 小林 智也】