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海外の需給動向【牛乳・乳製品/EU】 畜産の情報  2022年3月号

生乳取引価格は高水準で推移する一方、生産コストも上昇

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生乳出荷量、3カ月連続で前年同月を下回る
 欧州委員会によると、2021年11月の生乳出荷量(EU27カ国)は前年同月をわずかに下回る1097万2390トン(前年同月比0.7%減)となった(図1、表)。
 同月の出荷量を国別に見ると、主要生産国の中で中位のイタリア(同7.8%増)、ポーランド(同0.9%増)、アイルランド(同4.9%増)が前年同月を上回った一方で、主要生産上位3カ国のドイツ(同2.9%減)、フランス(同2.7%減)、オランダ(同4.1%減)は、いずれも前年同月を下回った。
 主要生産国では、環境規制強化などの影響により乳用牛飼養頭数が減少していることに加え、飼料価格の高騰などによる生産コストの上昇などもあり、ドイツが6カ月連続、フランスが3カ月連続、オランダが12カ月連続、いずれも前年同月を下回って推移している。



12月の生乳取引価格は、前年同月比15.0%高
 欧州委員会によると、2021年12月のEUの平均生乳取引価格(推定値)は、100キログラム当たり40.7ユーロ(5298円:1ユーロ=130.16円(注1))と前年同月比15.0%高となった(図2)。
 EU域外からの乳製品需要が旺盛な一方で、21年1〜11月のEU全体の生乳生産量が前年同期並みにとどまっていることもあり、同価格は過去6カ年平均(2015〜20年)を6ユーロ(781円)も上回る高い水準となっている。しかし、現地報道によると、生産者は肥料、飼料、燃料などのコストの高騰に直面していることから、現在の乳価でも増産意欲を駆り立てるまでには至っていないとしている。

(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年1月末TTS相場。
 

乳製品価格、供給減から上昇傾向で推移
 欧州委員会によると、乳製品の堅調な需要に支えられて、価格も上昇傾向で推移している(図3)。直近の1月23日の週平均の乳製品価格は、バターが100キログラム当たり573ユーロ(7万4582円、前年前月同週比66.0%高)、脱脂粉乳が344ユーロ(4万4775円、同50.6%高)、全粉乳が431ユーロ(5万6099円、同54.3%高)であった。
 前述の通り、EUの主要生産国で生乳生産量が減少し、乳製品に仕向けられる原料乳が不足する中、EU域内外の乳製品需要は堅調であることから、乳製品の価格も上昇傾向で推移している。その結果、バターや全粉乳の価格が米国産やオセアニア産と比較して高い水準となっており、輸出への影響が懸念されている。


(調査情報部 小林 智也)