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特集:海外の牛乳・乳製品需給の動向について〜新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて〜畜産の情報 2022年3月号

海外の牛乳・乳製品需給の動向について〜新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて〜

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調査情報部
 2020年に入って世界的な流行が始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、世界各地で都市封鎖や外出規制など社会経済活動が制限されてきた。その後、ワクチンや治療薬が開発され、普及してきたが、新たな変異株(オミクロン株)の出現などにより世界的な流行(パンデミック)は継続しており、依然として世界中の人々への心身両面への影響とともに世界経済に大きな影響を与え続けている。
 主要国の畜産業界においても、COVID-19発生以降、都市封鎖に伴う買いだめ、外食産業の営業停止による需要への影響の他、移動制限による食品流通の混乱などが生じた。
 わが国の畜産業界においても、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が適用され、外出が制限されたことで巣ごもり需要が拡大し、内食や中食に消費がシフトした一方で、外食の低迷やインバウンドの縮小による業務用需要が大幅に落ち込むなど、大きな畜産物需要の変動を経験した。
 今号で特集する牛乳・乳製品についてみると、臨時休校による学校給食停止や業務用需要の低迷などによる生乳の大幅な需給緩和に直面しているが、農林水産省によるプラスワンプロジェクトなどの需要喚起のほか、機構では、バターなどの需要拡大を図るための取り組みへの支援や脱脂粉乳の飼料などへの転用対策を実施してきた。
 COVID-19の発生から2年以上が経過し、あらゆる困難に直面しながらも、各国の政府や関係者による支援策の実施などにより、生産、流通、消費の各段階においても一定の回復が見られている。
 一方で、22年1月の国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しによると、世界の実質国内総生産(GDP)成長率は、オミクロン株が出現する前の21年10月の予測から0.5%落ち込むと見込むなど、今後の状況によっては、再び世界経済が停滞し、畜産物の需給は大きく変動する可能性があり、引き続き動向を注視する必要がある。
 21年2月号の海外特集号では、COVID-19の影響を踏まえた海外の食肉需給の動向について報告したが、今号では海外の牛乳・乳製品需給を主要テーマとし、米国、ニュージーランド、中国については、委託調査などを活用した調査結果を、EUについては、先般開催された農業観測会議の報告を中心に、各国の21年末までのCOVID-19の影響を踏まえた牛乳・乳製品をめぐる需給動向について報告する。
 地域によっては、今般のCOVID-19をきっかけに健康志向が強まり、牛乳・乳製品の消費動向に変化が見られたところもあり、本報告が牛乳・乳製品をめぐる主要国の動きを理解し、今後のわが国におけるウィズコロナ、アフターコロナを見据えたニューノーマルを模索する一助となれば幸いである。