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国内の需給動向【令和3年の食肉の輸出動向】 畜産の情報 2022年4月号

令和3年の食肉の輸出動向について

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 令和2年4月に「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律(令和元年法律第57号)」が施行され、国を挙げて輸出促進活動が行われている。3年は、世界的なコロナ禍が続く中であっても、農林水産物・食品の輸出金額がはじめて1兆円を突破した。このうち、牛肉の輸出金額は、アルコール飲料とホタテ貝に次いで、第3位となっている。牛肉を含む3年の食肉の輸出動向について、畜種別に紹介する。

【牛肉】牛肉輸出量、前年比62.6%増

 令和3年の牛肉輸出量(牛くず肉を除く。以下同じ)は、7879トン(前年比62.6%増)と11年連続で増加した。これは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による世界的な巣ごもり需要を受けた家庭向けの販路開拓などによるものとみられる。
 また、同年の輸出先は前年から4カ国が増加し、44カ国・地域となった。多くの国・地域向けで増加しており、国・地域別に見るとシェアはカンボジア向けが28%、次いで香港が18%、米国が15%、台湾が12%となった(図1)。なお、米国と台湾の順位が前年から入れ替わったが、米国の景気回復による外食需要の増加によるものとみられる。
 

 3年の輸出金額は、536億7716万円(同85.9%増)と前年から大幅に増加し、過去最高となった。
 また、3年の牛肉輸出量の部位別割合を見ると、全体に占める「ロイン」の割合が58%と最も多く、次いで「かた・うで・もも」が27%、「ばら」が13%となった(図2)。なお、北米やEU向けはサーロインなどのロインを中心とした輸出となっている一方、アジア向けはフルセットでの輸出が比較的多く、近年この傾向に変化はみられない。

 
 3年の冷蔵・冷凍別の牛肉輸出量を見ると、冷蔵は3490トン(同49.1%増)、冷凍は4388トン(同75.3%増)と、ともに前年から大幅に増加した。全体に占める「冷蔵」の割合は44%と前年から4ポイント低下した一方、「冷凍」の割合は56%と前年から4ポイント増加した(図3)。
 

 

【豚肉】豚肉輸出量、前年比21.4%増

 令和3年の豚肉輸出量(豚くず肉を除く。以下同じ)は、1620トン(前年比21.4%増)と12年連続で増加した。同年の輸出先は、日本国内での豚熱発生を受けた台湾向け輸出の一時停止が続いているが、前年から1カ国が増加し、7カ国・地域となった。国・地域別に見ると、主要な輸出先である香港およびシンガポール向けなどが増加しており、また、シェアは香港向けが70%と最も多く、次いでシンガポール向けが20%となった(図4)。
 
 
 3年の輸出金額は、19億3742万円(同20.7%増)と前年から増加し、過去最高となった。なお、COVID-19発生前の元年と比較すると、輸出量・輸出金額ともに、約2倍となっており、牛肉同様に巣ごもり需要を受けた家庭向けの販路開拓などによるものとみられる。
 また、ソーセージやハムなどを含む豚肉加工品(豚肉調製品(ゆでた豚足など)を除く。以下同じ)の輸出量を見ると、年によって増減はあるものの、3年は94トン(同20.8%増)と前年から増加した(図5)。なお、令和3年2月、日本畜産物輸出促進協議会において「食肉加工品輸出部会(事務局:日本ハム・ソーセージ工業協同組合)」が新たに設置された。日本産の食肉加工品は技術面や衛生管理面で評価が高いことから、今後の輸出拡大が期待される。
 

 

【鶏肉】鶏肉輸出量、前年比46.4%減正肉は、前年比7.0%増

 令和3年の鶏肉輸出量は、日本国内での高病原性鳥インフルエンザ発生を受けた輸出の一時停止などにより、5301トン(前年比46.4%減)と前年から大幅に減少した。同年の輸出先は、前年から1カ国が減少し、5カ国・地域となった。国・地域別に見ると、シェアは香港向けが62%と最も多く、次いでカンボジア向けが35%となった(図6)。

 

 
 3年の輸出金額は、12億9508万円(同37.2%減)と前年から大幅に減少した。
 また、鶏肉輸出量の大半は鶏足(もみじ)が占めており、正肉(もも・むね)の割合は小さいものの、3年の正肉輸出量は、651トン(同7.0%増)と前年からかなりの程度増加した(図7)。なお、国・地域別に見ると、香港向けの割合が91%となった。近年増加傾向であるとともに、香港ではCOVID-19の影響により内食化が進み、家庭向けの正肉需要が増加したことから、今後も輸出拡大が期待される。

(畜産振興部)