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海外の需給動向【鶏肉/ブラジル】 畜産の情報  2022年4月号

鶏肉生産量、国内外の堅調な需要を背景に3年連続で増加

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2021年鶏肉生産量、前年比6.0%増

 ブラジル地理統計院(IBGE)によると、2021年の鶏肉生産量は、1459万3000トン(前年比6.0%増)と前年をかなりの程度上回り、3年連続の増加となった(図1)。飼料価格高など生産コストが上昇したものの、国内外からの堅調な需要が続いたことから、生産量の増加につながったものとみられる。

 

2021年の鶏肉輸出量、前年比7.8%増

ブラジル経済省貿易事務局(SECEX)によると、2021年の鶏肉輸出量は、420万3600トン(前年比7.8%増)と前年をかなりの程度上回った(表、図2)。同国の鶏肉輸出は、生産コストが上昇する中で、米ドルに対するレアル安の為替相場や、アジアやEUの鶏肉輸出国で高病原性鳥インフルエンザが発生したことなどを追い風に増加傾向で推移した(図3)。
 輸出先別に見ると、最大の輸出先である中国向けは63万9246トン(同5.0%減)と前年をやや下回ったものの、3年連続で最大の輸出先となった。一方、これに次ぐ日本向けは43万8341トン(同9.2%増)と増加した。日本向けは、特に9〜12月の輸出量が増加しているが、これは、輸出競合国であるタイで、COVID-19の影響から鶏肉生産量が減少したためとみられる。また、主要な輸出先であるサウジアラビア向けは35万3511トン(同24.4%減)と大幅に減少した。これは、サウジアラビア食品医薬品庁(SFDA)が21年5月、サルモネラ汚染が確認されたとしてブラジルの11カ所の鶏肉処理場からの輸入を停止したためである。一方で、アラブ首長国連邦は6月以降の輸出量が前年を大幅に上回り、日本に次ぐ第3位の輸出先となった。このほか、フィリピン向けは16万8001トン(同約2.8倍)と前年を大幅に上回った。アジアおよび中東以外の地域では、南アフリカ共和国をはじめとしたアフリカ向けが増加した。
  





 

2021年の鶏肉生産コストは高水準で推移

 ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)養鶏・養豚センター(CIAS)によると、最大の鶏肉生産州であるパラナ州のブロイラー生産コスト指数(2010年1月の生産コストを100とした指数)は、高水準で推移している。同指数は、19年9月ごろまで220ポイント前後で推移していたが、その後上昇傾向で推移し、21年5月には400ポイントを超えた(図4)。直近の22年1月は、前年同月比20.4%高の426ポイントとなっている。
 鶏肉生産コストの約7割は飼料費が占めている。ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)によると、主要な飼料原料であるトウモロコシの卸売価格(マットグロッソ州)は、19年10月ごろから上昇傾向で推移し、22年1月の価格は60キログラム当たり90.6レアル(2055円:1レアル=22.68円(注)、前年同月比34.4%高)と高値で推移している(図5)。

(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年2月末のTTS相場。



 

鶏肉卸売価格は高騰後、下落傾向に転じる

 サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、ブラジルの鶏肉卸売価格(サンパウロ州、名目価格)は、国内外からの堅調な需要を背景に2020年5月ごろから上昇傾向で推移し、21年9月中旬には1キログラム当たり8.57レアル(194円)と、統計が公表された04年以降の最高値を更新した(図6)。しかしながら、価格高騰により消費者の需要が減退したことから、21年10月以降、価格は下落傾向に転じ、直近の22年2月はおおむね同6レアル(136円)台で推移している。


 
(調査情報部 井田 俊二)