2021年の家きん肉生産量は前年比微増
中国国家統計局によると、2021年の家きん総出荷羽数は157億4000万羽(前年比1.1%増)、生産量は2380万トン(同0.8%増)となった。また、21年末の家きん飼養羽数は67億9000万羽(同0.1%増)となり、基本的に安定した生産が続いている。
米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、21年の中国の鶏肉生産量
(注1)は前年比0.7%増の1470万トンと見込んでおり、22年は同2.7%減の1430万トンと予測されている(表1)。
中国では、大規模生産に適した白羽鶏肉は、拡大するオンラインショッピングでの取引やスーパーマーケットなどでの販売が増加している。一方、ウェットマーケット
(注2)を中心に販売される在来種の黄羽鶏肉は、ウェットマーケットの閉鎖や価格競争力の観点などから、今後の生産および販売環境は厳しいとされている。
(注1)同国では、家きん肉生産量のうち約6割が鶏肉であるとされている。鶏肉の生産割合については『畜産の情報』2020年5月号「中国の肉用鶏産業の現状と鶏肉需給の見通し」2 肉用鶏産業の概要(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001123.html)を参照されたい。
(注2)新鮮な生鮮食料品などを取り扱う伝統的な販売形態の市場。
鶏肉価格は小幅に上昇も、当面は横ばいで推移の見込み
中国農業農村部によると、2022年2月第2週の鶏肉市場価格は、1キログラム当たり23.1元(429円:1元=18.57円
(注3)、前年同期比1.5%高)となり、21年10月以降、小幅ながら上昇基調にある(図)。21年の価格動向を見ると、食肉の需要期となる春節(21年は2月11〜17日)をピークに、家きん肉の増産や豚肉生産の回復などから3月以降の鶏肉価格は下落傾向で推移していた。その後、需給を踏まえて一部の生産者が生産規模の縮小を図ったこと、また、秋口からの気温の低下に伴い食肉需要が伸びてきたことから、10月下旬以降は前年を上回っていた。直近の状況を見ると、春節(22年は1月31日〜2月6日)を迎えてさらなる上昇となっており、例年通りの価格推移となっている。
今後の鶏肉価格についてUSDAは、
嗜好性が高い豚肉の価格が下落傾向にあることや、黄羽鶏肉の生産、販売減が見込まれていることから、22年上半期は横ばいで推移すると見込んでいる。また、飼料価格の高騰などにより、22年上半期は生産者の収益性の悪化から薄利に対応できる大規模生産者の生産拡大が進むとしている。なお、中国では、すでに白羽鶏肉の生産量の約7割を大規模生産者が占めているとされている。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年2月末TTS相場。
21年の鶏肉輸入量は前年比やや減、22年は微増の見込み
2021年の冷凍鶏肉輸入量は、前年比3.8%減の145万6754トンとなった(表2)。減少の要因として、国内の豚肉価格や鶏肉価格の下落、また、COVID-19の影響下での世界的な生産体制や物流の混乱に加え、国内コールドチェーンの検疫強化などが影響したとされている。輸入先別に見ると、米国からは43万9968トン(前年比7.5%増)と前年をかなりの程度上回ったものの、ブラジルやロシア、タイなどの主要輸入先からは前年を下回った。
22年の中国の鶏肉輸入量についてUSDAは、国内の鶏肉生産が縮小傾向に向かうなど若干の輸入環境の改善が見込まれるため、わずかな増加を見込んでいる。
21年の鶏肉調製品輸出量は大幅増、22年も同水準の見込み
2021年の鶏肉調製品の輸出量は、26万9839トン(前年比19.0%増)と前年を大幅に上回った(表3)。最大の輸出先である日本向け(18万92トン、同11.7%増)を始め、主要輸出先でいずれも前年を上回った。
22年の鶏肉輸出量についてUSDAは、おおむね21年並みと見込んでいる。この中で、中国の輸出業者は主要輸出先である日本向け製品として、従来の外食産業や小売り向け製品よりもコンビニエンスストアなどで取り扱われている個包装のReady-To-Eat 製品向けの製造を強化しているとしている。また、低カロリー、減塩など健康志向に配慮した製品の製造を強化する動きも見られるとしている。
(調査情報部 海老沼 一出)