12月の生乳出荷量、前年同月比1.5%減
欧州委員会によると、2021年12月の生乳出荷量(EU27カ国)は前年同月をわずかに下回る1133万6040トン(前年同月比1.5%減)となった(図1)。また、同年1〜12月の累計は1億4383万8410トン(前年比0.2%減)となった(図2、表1)。生乳出荷量は、環境規制の強化に伴う乳用牛飼養頭数の減少に加え、飼料価格の高騰などによる生産コストの上昇から、21年9月以降、4カ月連続で前年同月を下回って推移し、通年でも前年を下回った。これは、EUの生乳クオータ制度
(注1)が15年3月末に廃止されて以来、初めてのことである。
21年の出荷量を国別に見ると、上位3カ国のドイツ(同1.9%減)、フランス(同1.5%減)、オランダ(同2.8%減)がいずれも前年を下回った。
なお、欧州委員会が21年12月に公表した中期的展望
(注2)によると、生乳出荷量の伸び率は乳用牛飼養頭数の減少や有機酪農の進展などから過去10年間と比較して鈍化するものの、1頭当たり乳量が増加していることから生乳出荷量は増え続けており、31年には21年比5.5%増の1億5388万トンになると見込まれている。
(注1)国ごとに生乳生産量の枠を割り当て、割り当てた枠を超過した場合、一定額の課徴金を課すとともに、加盟国内の農家間での売買などを認める生産割当制度。
(注2)『畜産の情報』2022年3月号「パンデミック下でも堅調なEUの乳製品需要〜2021年EU農業観測会議を中心に〜」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_002025.html)を参照されたい。
飼養頭数は6年連続で減少
欧州委員会によると、2021年12月時点の乳用経産牛飼養頭数(EU27カ国)は、2021万8960頭(前年比1.5%減)と6年連続で前年を下回った(表2)。主要生産国で飼養頭数が増加したのはアイルランド(同3.4%増)のみであり、上位3カ国のドイツ(同2.3%減)、フランス(同2.5%減)、ポーランド(同4.3%減)をはじめ軒並み減少した。
EUでは、環境規制の強化に伴い家畜飼養をめぐる情勢が厳しさを増している。オランダ政府は21年12月、窒素排出量削減に向けた新たな計画を公表し、この中で30年までに窒素使用量を1990年比で50%削減する目標を掲げ、今後15年間の予算として250億ユーロ(3兆2710億円:1ユーロ=130.84円
(注3))を措置するとしている。同国政府は、窒素排出量の削減に向けた取り組みの一つとして、酪農家を対象とした廃業などに要する補助金を支払うこととしている。この取り組みは、本年夏ごろから受け付けが開始されるため、今後も乳用牛飼養頭数の減少が続くとみられている。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年2月末TTS相場。
(調査情報部 小林 智也)