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海外の需給動向【牛乳・乳製品/豪州】 畜産の情報 2022年4月号

生乳生産量は引き続き減少、生乳確保のため乳価は上昇

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12月の生乳生産量は引き続き減少

 デーリー・オーストラリア(DA)によると、2021年12月の豪州の生乳生産量は、酪農主産地であるビクトリア州などで前年同月を下回った結果、83万8946キロリットル(86万4115トン相当、前年同月比1.2%減)となった(表1、図1)。豪州の生乳生産量は、酪農が盛んな同国南東部沿岸を中心にラニーニャ現象に伴う長雨が牧草の生育に影響を及ぼしたことなどから、7カ月連続で前年同月を下回っている。このため、21/22年度(7月〜翌6月)の12月までの累計でも482万7816キロリットル(497万2650トン相当、前年同期比2.1%減)となった。




豪乳業による生乳確保競争が激化

 DAは、2021年12月に公表した豪州酪農乳業の現状と見通しに関する報告書(注1) の中で、「今年度の生乳生産量が前年度を上回る可能性は低く、生乳確保に向けた乳業の競争は今後も続く」と予測していた。その予測を裏付けるように、22年に入り、乳業各社による生産者支払乳価の引き上げが相次いでいる。

(注1)報告書の内容については、海外情報「生乳生産量は減少も、酪農家の収益性は良好との見通し(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003146.html)を参照されたい。

 中国乳業大手の蒙牛乳業傘下のバラ社は22年1月、年度当初(21年7月1日)に生乳の固形分(注2)1キログラム当たり6.60〜7.00豪ドル(561〜595円:1豪ドル=84.95円(注3))としていた乳価(注4)を、同6.70〜7.10豪ドル(569〜603円)に引き上げると公表した。これを受け、豪州フォンテラ社も、21年10月に同7.10豪ドル(603円)に引き上げていた乳価をさらに引き上げ、同7.30豪ドル(620円)とすることを本年2月に公表した。このほか、現地報道によると、ベガ社やブラ社なども乳価を引き上げたとされている。

(注2)乳脂肪分および乳たんぱく質。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年2月末TTS相場。
(注4)海外情報「2021/22年度の当初乳価は7ドル前後で幕開け(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002989.html)を参照されたい。


 今回の乳価引き上げの背景について豪州フォンテラ社は、乳製品国際相場が歴史的な高水準を維持していることおよび自社の業績が好調であることを挙げている。一方で、乳製品国際相場の好況と豪ドル安の継続という良好な輸出環境にもかかわらず、加工原料乳の主産地であるビクトリア州やタスマニア州の生乳生産量の減少から、輸出市場から本来得られるはずの利益が制限されているともしている。
 乳価の引き上げ傾向は隣国のニュージーランドも同様であり、同国最大の酪農協系乳業メーカーであるNZフォンテラ社は1、2月と2カ月連続で生産者支払乳価の引き上げを公表し、2月28日現在、同社の乳価は同社過去最高水準である同9.60NZドル(761円:1NZドル=79.27円(注3))となっている(注5)

(注5)海外情報「フォンテラ社、生産者支払乳価を3カ月連続の引き上げ(NZ)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003191.html)を参照されたい。

主要乳製品の輸出はいずれも好調

 DAが発表した2021年12月の主要乳製品4品目の輸出量は、全品目で前年同月より増加した(表2、図2)。
 品目別に見ると、脱脂粉乳は、最大の輸出先である中国向けの輸出増がけん引した結果、大幅に増加した。また、全粉乳は、タイやベトナムなどのアジア向け輸出の伸びなどを受けて大幅に増加した。バターおよびバターオイルは、タイや韓国などのアジア向け輸出が堅調であったことによりわずかに増加した。チーズは、最大の輸出先である日本向けは減少したものの、中国やマレーシアなどのアジア向け輸出が好調だったため、やや増加した。



(調査情報部 阿南 小有里)