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海外の需給動向【牛乳・乳製品/NZ】 畜産の情報 2022年4月号

乳製品輸出量は減少も、世界的需要の高まりから輸出額は増加

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生乳生産量は6カ月連続で減少

 ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2022年1月の生乳生産量は232万3855トン(前年同月比6.1%減)とかなりの程度減少し、6カ月連続で前年同月を下回った(図1)。この結果、21/22年度(6月〜翌5月)の1月までの累計でも、1547万1208トン(前年同期比3.8%減)とやや減少した。
 この要因についてニュージーランド証券取引所(NZX)は、12月以降、主要酪農地帯の大部分で非常に乾燥した状態が続き、牧草の生育に影響があったことを挙げている。また、今後の見込みについて、2月中旬の降雨により牧草のひっ迫度合いは多少緩和されたものの、1月までの牧草の状態を踏まえると厳しい状況が続くとみている。特に、21年2、3月の生乳生産が好調であったことから、22年3月までは前年同月を大幅に下回って推移すると予測している。

 

1月の乳製品輸出量は減少も、輸出額は増加

 ニュージーランド統計局(Stats NZ)によると、2022年1月の乳製品輸出量は、主要4品目すべてで前年同月を下回った(表1、図2)。
 品目別に見ると、脱脂粉乳は、インドネシアやタイ向けはそれぞれ大幅に増加したものの、最大の輸出先である中国向けが3割以上減少したことで、全体ではかなりの程度減少した。全粉乳は、最大の輸出先である中国向けをはじめ、アラブ首長国連邦やスリランカ向けなどが大幅に減少したことを受け、全体でも大幅に減少した。また、バターおよびバターオイルは、最大の輸出先である中国向けは増加したものの、その他の国が軒並み減少したことで、全体ではかなり大きく減少した。チーズは、輸出先第2位である日本向けはわずかに増加したものの、中国をはじめとした日本以外の主要輸出先向けが減少した結果、かなり大きく減少した。
 一方、世界的な乳製品需給の高まりを背景に、輸出単価はいずれも上昇基調にある。1月の輸出額を品目別に見ると、脱脂粉乳が1億5804万NZドル(125億円:1NZドル=79.27円(注1)、前年同月比20.6%増)、全粉乳が6億9792万NZドル(553億円、同5.8%増)、バターおよびバターオイルが3億2641万NZドル(259億円、同29.2%増)、チーズが2億1450万NZドル(170億円、同4.4%増)と、4品目すべてで前年同月を上回る好調さを見せた。

(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年2月末TTS相場。



 

GDT、上昇基調が持続

 2022年2月15日に開催されたグローバルデイリートレード(GDT:月2回開催されるフォンテラ社主催の電子オークション。乳製品の国際価格の指標とされる)の1トン当たり平均取引価格は、主要4品目のいずれも前回開催(本年2月1日)時から上昇した(表2、図3)。
 品目別の平均取引価格を見ると、脱脂粉乳は、通例通り北アジア(注2)からの需要にけん引されて前回よりかなりの程度上昇したほか、今回はEUからの需要も強かった。通常は輸出側であるEUからの需要が強かったことは、関係者の注目を集めている。これについてNZXは、EUの供給がいかにひっ迫しているかを示すものであり、EUのバイヤーは脱脂粉乳を確保するためEU域外に目を向けていると分析している。また、全粉乳は、北アジアからの旺盛な需要に加え、アフリカや東南アジアの需要も強く、前回よりやや上昇した。バターは、北アジアからの需要が最も強かったほか、中東からの引き合いも強く前回よりやや上昇した結果、過去最高額を記録した。チーズも、北アジアと中東からの需要にけん引され前回よりやや上昇し、同じく過去最高額を記録した。
 GDTの高騰要因について豪州の4大銀行の一つであるウェストパック銀行は、NZをはじめ、EUや米国などの主要乳製品輸出国での悪天候やコスト高などから、生乳生産が低調であることを挙げており、ウクライナとロシアの緊張関係も考慮する必要があるとしている。両国は主要な穀物生産国であり、また、ロシアは主要な石油・ガス生産国でもある。その結果、今般のロシアによるウクライナ侵攻は、すでに高騰している世界の穀物価格や肥料価格にさらなる上昇圧力をかけることとなり、結果として世界の乳製品価格の上昇要因になるとしている。

(注2)ニュージーランド外務貿易省は、中国、日本、香港、韓国、台湾を北アジアとしている。





 

GDT、3社の共同保有に

 GDTを主催するフォンテラ社は2月17日、NZXおよびドイツに本拠を置く欧州エネルギー取引所(EEX)と戦略的パートナーシップを結び、GDTを3社の共同保有とすることを公表した。2022年半ばには所要の手続きを終え、3社はそれぞれGDTの株式の3分の1ずつを保有するとしている。
 公表に際しフォンテラ社は、「株主に2社が加わることは、独立・中立で価格透明性の高いプラットフォームとしてのGDTの地位をさらに高めるものである」と述べている。

(調査情報部 阿南 小有里)