総飼養頭数、前年比1.5%減
カナダ統計局によると、2022年の牛飼養頭数は1109万5000頭(前年比0.5%減)となり、1989年以来の最低数となった(表)。カナダの肉用牛飼養頭数は、2006年以降ほぼ一貫して減少傾向で推移している。アルバータ州、サスカチュワン州、マニトバ州の一部では、干ばつが深刻な問題となっており、現地情報によるとこれら3州を中心とするプレーリー地帯(カナダ中南部の平原地帯)の干ばつの継続が頭数減少の一因としている。
飼料価格高により、経営は圧迫
カナダでの飼料穀物の中心となる大麦の価格は、西部プレーリー地域が干ばつに見舞われたことによって生産量が大幅に減少し、在庫もひっ迫していることから、2020年後半から週ごとに上昇を続け、22年は過去最高値を更新している。
カナダ肉用牛生産者協会(CCA)の市場分析部門であるCanFaxによると、21年のフィードロットの収益は6月のみ黒字で、他の月は赤字となっている(図1)。現地情報によると、22年の肉用牛価格は前年から上昇しているものの、飼料コストが高止まりしているため収益の増加は難しく、肥育経営の収益は圧迫されるとしている。他方で、22年の大麦生産は減産となった21年より回復が見込まれることで、今後の飼料コストは下落するという見方もある。そのため、出荷価格に対する飼料コストの比率は改善が期待できるものの、これまでの飼料価格高騰の影響を相殺するまでには至らず、大半の肥育経営の収益はやや改善または横ばいになるとみられている。ただし、天候の他にも、鉄道網やトラックドライバーの労働力不足などのサプライチェーンの問題や国際情勢の行方など、飼料供給には不安定さが残るため、今後の動向を注視する必要がある。
米国向け輸出が好調
カナダ統計局によると、2021年の牛肉輸出量は44万1325トン(前年比16.6%増)と大幅に増加した(図2)。この7割超を米国向けが占めている。現地情報によると、米国ではインフレ(価格上昇)が加速しているため、牛肉価格も高値での推移が予測されている。一方で、22年の米国の牛肉生産量は減少が見込まれており、カナダ産牛肉の需要増が期待されている。また、近年は日本向け輸出量の増加などアジアでの需要の高まりにより、わずかではあるが、米国への依存度は相対的に低下しつつある。
(調査情報部 上村 照子)