肉牛生体取引価格は横ばいか下落傾向
肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2022年2月以降、1キログラム当たり1110〜1130豪セント(1043〜1062円:1豪ドル=94.00円
(注))前後で推移しており、横ばいもしくは緩やかな下落傾向となっている(図)。
(注) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年3月末TTS相場。
現地報道によると、2月下旬からの豪雨により、クイーンズランド(QLD)州とニューサウスウェールズ(NSW)州北部の肉牛生産者からの出荷頭数が減少したものの、食肉加工施設も同じく一時的に操業停止を余儀なくされたことで、需要の一時的な減少から、肉牛価格への影響はほとんどなかったとしている。また専門家からは、大幅な価格下落のタイミングがあるか否かは、今後のQLD州の牧草の生育に影響を与える天候の状況次第との見方が示されている。
牛肉輸出量は2月も低水準
豪州農業・水・環境省(DAWE)によると、2022年2月の牛肉輸出量は全ての主要輸出先向けが減少しており、全体としても5万9513トン(前年同月比10.9%減)とかなりの程度減少した(表)。現地報道によると、前述の通り2月下旬の豪雨による食肉加工施設の一時的な操業停止に加え、新型コロナウイルスのオミクロン株感染の拡大が続いていることにより、一部の食肉加工施設では人員不足で生産に支障を来しているためとしている。
輸出先別に見ると、最大の輸出先である日本向けは、1万6232トン(同9.2%減)とかなりの程度減少した。
韓国向けも、1万564トン(同12.8%減)とかなり大きく減少した。なお、QLD州にあるNHフーズ・オーストラリア社(日本ハムグループ会社)の食肉加工施設で製造された牛肉から、残留化学物質が検出されたことを理由に、韓国政府は22年3月23日付けで同施設からの牛肉輸入を停止している。これについて豪州政府は証拠がないとして、NHフーズ・オーストラリア社とともに、韓国政府に対し、早期解決に向けた交渉を図っているとしている。
米国向けも、9025トン(同7.7%減)とかなりの程度減少した。現地報道によると、米国の西部および中部地域が深刻な干ばつに見舞われ、と畜頭数の増加から豪州産への需要が減少していることや、豪州国内での牛群再構築によると畜頭数の低迷を背景に、米国向け主要輸出品であるハンバーガー用の冷凍牛肉を十分に供給できないことが要因としている。
(調査情報部 国際調査グループ)