2021年の豚総飼養頭数は前年比2.9%減
欧州委員会が3月21日に公表した統計(Eurostat)によると、2021年12月時点の豚総飼養頭数(EU27カ国)は、1億4170万頭(前年比2.9%減)となった(表1)。
内訳を見ると、繁殖母豚は1102万頭(同3.5%減)、子豚(20キログラム未満)は4171万頭(同0.4%減)、子豚(20〜50キログラム)は3042万頭(同2.6%減)、肥育豚(50キログラム以上)は5857万頭(同4.5%減)といずれも前年を下回った。
このような中、EU最大の飼養頭数を誇るスペインは、同5.1%増の3445万頭(EU全体に占める割合は24%)となり9年連続で増加した。一方、第2位のドイツは同8.9%減の2376万頭(同17%)、第3位のデンマークは同1.8%減の1315万頭(同9%)などスペインを除く主要国は軒並み減少した。なお、上位10カ国で総飼養頭数の89%を占めている。
供給過多と価格の下落を反映し豚総飼養頭数が減少した一方で、EU域内でのCOVID-19に関連する規制の解除やイースター休暇に伴う豚肉需要の増加、また、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う飼料価格の高騰などを受け、豚枝肉卸売価格は急騰している。直近の3月21日の週の同価格は100キログラム当たり182.38ユーロ(2万5205円:1ユーロ=138.20円
(注1))と4週前と比較して33.6%高となった(図1)。
(注1) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年3月末TTS相場。
2021年の豚肉生産量は、前年比1.6%増
欧州委員会によると、2021年の豚肉生産量は上半期の輸出需要などを受け、前年比1.6%増の2340万7690トンとなった(表2)。
主要生産国別に見ると、唯一減産となったドイツを除き、いずれの国も増産となった。
EU最大の豚肉生産国となったスペイン(519万4440トン)は、同3.8%増と8年連続で増加した(図2)。同国はインテグレーション化の進展に伴い生産量を増加させる中
(注2)、20年9月のドイツでのアフリカ豚熱発生以降、ドイツに代わり中国向けの輸出量を伸ばしたことも生産を後押しした。
第2位に転落したドイツ(496万5000トン)は同2.9%減となり、5年連続で減少した。ドイツ養豚生産者協会によると、中国向け輸出の停止などにより滞留していた肥育豚のと畜が21年にずれ込んだことから、本来であれば生産量の減少幅はもう少し大きかったとしており、22年の生産量も減少すると見込んでいる。
(注2) 本誌82ページ「スペインの養豚産業の現状および輸出戦略」を参照されたい。
(調査情報部 小林 智也)