22年の鶏肉生産は、前年比微増でスタート
タイ農業協同組合省農業経済局によると、2021年の鶏肉生産量は264万6098トン(前年比1.3%減)とわずかに減少した。また、22年1〜2月の鶏肉生産量は44万4156トン(前年同期比1.0%増)とわずかに増加した(図1)。
22年の国内の鶏肉卸売価格は高値で推移
2022年2月の鶏肉卸売価格は、1キログラム当たり52.5バーツ(197円:1バーツ=3.76円
(注1))と近年にない水準にまで上昇した(図2)。タイでは、飼料価格の高騰による生産コスト増の影響もある中で、21年11月のアフリカ豚熱の発生を受けて豚肉価格が高騰し、代替需要として鶏肉の需要が高まっていたため、鶏肉価格も高値で推移している
(注2)。しかしながら、タイ農業協同組合省農業経済局によると、最近の豚肉価格は依然として高値ではあるものの一時期に比べて下落しており、鶏肉需給に対し長期的に大きな影響を及ぼすことはないとされている。
(注1) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年3月末TTS相場。
(注2) 海外情報「2022年の豚総出荷頭数、アフリカ豚熱などの影響で減少見込み(タイ)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003182.html)を参照されたい。
21年の冷凍鶏肉輸出はかなり大きく増加
2021年の冷凍鶏肉の輸出量は、37万2739トン(前年比11.8%増)とかなり大きく増加した(表1)。しかし、22年1〜2月の輸出量は4万9417トン(前年同期比14.1%減)とかなり大きく減少し、最大の輸出先である日本向けは2万2320トン(同25.6%減)と大幅に減少した。タイでは、依然としてCOVID-19により外国人労働者の不足が継続し、加工工程が簡易な製品を優先する傾向が続いている。また、鶏肉生産は比較的安定しているとみられるものの、労働条件の良い工業分野に人材が流れていることも、労働者の確保に苦心している要因の一つとされている。一方でブラジルでも同様に鶏肉産業の人手不足の影響が大きくなりつつある中で、タイ産への需要が高まっている。最近ではウクライナ情勢による中東やEUの需要増から、これら地域への輸出が増加している。また、3月には鳥インフルエンザの発生により長年にわたって輸出が停止されていたサウジアラビア向けの輸出も解禁されるなど、輸出環境に変化が生じている。
21年の鶏肉調製品の輸出はわずかに増加
2021年の鶏肉調製品輸出量は55万147トン(前年比0.7%増)とわずかに増加し、22年1〜2月の輸出量は10万6927トン(前年同期比24.2%増)と大幅に増加した(表2)。輸出先別に見ると、日本向けをはじめ多くの主要輸出先で増加している。タイ国内の鶏肉処理加工施設での労働者不足などにより、鶏肉調製品生産への影響が懸念されているが、各施設において労働者への感染対策が講じられており、高付加価値となる輸出向けについては、一定の稼働が確保されているとみられている。
(調査情報部 海老沼 一出)