飼養頭数および生乳生産量は前年比1.0%減
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)によると、2022年2月の乳用経産牛飼養頭数は、前年同月比1.0%減の937万頭となった(図1)。同飼養頭数は前月より増加したものの、飼料コストの上昇が続いていることから、同月の生乳生産量は同1.0%減となった。
乳価は上昇傾向で推移
USDAによると、2022年2月の全米平均総合乳価は生乳100ポンド当たり24.7米ドル(1キログラム当たり67.19円:1米ドル=123.39円
(注1))と国内外からの堅調な需要を背景に21年夏から上昇傾向で推移している。飼料コストが上昇する中で、乳価の上昇率がそれを上回っていることから、同月の酪農マージン
(注2)は、前年同月比83.9%増の同10.98米ドル(同29.87円)となった(図2)。22年の乳価について現地報道では、米国内の乳牛飼養頭数の減少、国内外の生乳生産量の減少および国内外の乳製品需要の増加により、高値で推移すると予測している。
(注1) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2022年3月末TTS相場。
(注2) 酪農家のセーフティーネット制度である酪農マージン保障プログラム(DMC)で算定される全米平均総合乳価と飼料費の差額としての収益。DMCでは、酪農マージンが発動基準を下回った場合、補填(ほてん)が発動される。
22年1月のホエイの輸出量は大きく減少
2021年に過去最高を記録した乳製品輸出量
(注3)は、22年に入りわずかに変化が生じてきた。米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、同年1月の乳製品輸出量は、主要輸出品である脱脂粉乳およびホエイが前年同月を下回った(表)。
脂粉乳の輸出量は、主要輸出先であるメキシコ向けが、同国でのコロナ禍からの経済回復に伴い大きく伸びていたが、輸入需要の落ち着きなどから5万9400トン(前年同月比5.5%減)となった。
また、ホエイの輸出量は、1万2100トン(同33.8%減)と大幅に減少した。米国乳製品輸出協会(USDEC)によると、ホエイ輸出量の減少は二つの要因があるとしている。一つ目は主要輸出先である中国向けの減少である。中国では、ホエイは養豚生産の飼料向け利用が多いが、養豚経営の収益率の低下による増産意欲の減退で使用量が減少しているとしている。二つ目は、米国内消費者の健康志向の高まりからタンパク質濃縮ホエイ(WPC)に生産が移行しているため、ホエイ供給量が減少しているとしている。
一方で、チーズやバターの輸出量が増加したことにより、乳製品輸出額は上昇を続けている。
(注3) 海外情報「米国の乳製品輸出、2年連続で過去最高を記録(米国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003187.html)を参照されたい。
(調査情報部 上村 照子)