生乳生産量は増加
中国国家統計局によると、2021年の生乳生産量は、1頭当たり乳量の増加などから前年比7.1%増の3683万トンとなった(図1)。また、中国農業農村部は2月16日、今後の酪農・乳業振興政策の柱となる5カ年計画
(注1)を公表し、25年までに生乳等生産量
(注2)を4100万トン程度に引き上げるなど、引き続き酪農・乳業の発展に注力していく姿勢を見せている。
(注1) 「<十四五>全乳業競争力提昇行動方案」(2022年農牧発8号)を指す。詳細は、海外情報「酪農・乳業の競争力強化に向けた5カ年計画を公表(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003220.html)を参照されたい。
(注2) 牛由来の生乳のほか、ヤギやヤクなど由来の乳を含む生産量。
生乳価格は好調も収益性は低下
中国の生乳価格の動きとして、従来、需要期である春節(1月後半から2月)に向けて上昇しその後下降するという季節変動が見られたが、2021年は堅調な需要
(注3)にけん引され、年間を通して変動が少なく高値で推移した(図2)。農業農村部によると、同年の年間平均価格は1キログラム当たり4.29元(84円:1元=19.56円
(注4)、前年比13.2%高)と記録的な高水準となった。
一方で、飼料などの投入コストの高騰から酪農家の収益性は低下しており、22年の生乳価格が同4元(78円)を下回った場合、多くの酪農家が赤字経営に陥るとする専門家の意見もある。今後の飼料価格の動向について現地報道では、最近のCOVID-19の状況やそれに伴う都市封鎖などにより、見通せない部分があるとしながらも、上昇基調にある国際相場に加え、飼料価格の低下に寄与するほどのトウモロコシの備蓄放出が見込めないことなどから、引き続き高値で推移するという見方が多い。
(注3) 海外情報「1人当たり畜産物年間消費量が増加(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003175.html)を参照されたい。
(注4) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年3月末TTS相場。
乳製品輸入量は一部を除き昨年より増加
国内の旺盛な乳製品需要にけん引され、2021年の主要乳製品輸入量は、ヨーグルトと育児用調製粉乳(以下「育粉」という)以外の品目で前年比1割以上増加した(表)。同年の輸入の特徴としては、国産と外国産の原料価格差の拡大による全粉乳などの増加と、新生児数の減少などによる育粉の減少が挙げられる。
22年の動向について現地専門家は、引き続き生産を超える需要が見込まれることから輸入量は増加するものの、国際価格の高騰から輸入乳製品の価格優位性が低下し、伸び率は21年より縮小するとみている。また、現地専門家からは、需要が好調な中、ニュージーランドなど主要乳製品輸入先の供給量が限られているとした上で、国内でのさらなる生乳増産に向け、優良な繁殖システムの構築や飼料利用効率の向上など、国内酪農の推進が求められるとする意見も出ている。
(調査情報部 阿南 小有里)