京都市を例にみると、家庭由来の食品ロスは、一世帯当たり年間約6万円分(処理費用含む)
(1)であり、これに全国の世帯総数
(2)を乗じると、約3兆1100億円になる。また、農林水産省と環境省は、毎年、食品ロスの推計値を発表している。2021年11月30日に発表した最新値は、年間570万トンであった(2019年度)。この570万トンのうち、46%が家庭由来、54%が事業系由来である。事業系ロスによる損失推計額は約3兆6500億円、日本全体では家庭由来を含めると約6兆7500億円となる。世界の食品ロスによる経済的損失は、社会的・環境的コストを織り込んだ場合は2兆6000億米ドル
(3)(約335兆円(2022年5月16日現在のレート))であり、日本の国家予算の3.1倍にのぼる
(4)。
2020年9月、公正取引委員会は、コンビニエンスストア一店舗当たり、年間468万円(中間値)分の食料を廃棄していると発表した(ちなみに民間給与所得者の平均年収は433万円
(5))。全国にコンビニエンスストアは5万5000店舗以上ある。この廃棄額の背景には売れ残り分を原価に含めず、加盟店が損失の80%以上を負担する「コンビニ会計」の存在がある。これが健全な経済と言えるだろうか。食品を捨てることは、食品の価値以上のものを捨てることである。家畜を育て、稲や野菜を栽培するにも、運送にも、多くの人手とエネルギーが使われる。食品ロスは、それらの経済活動を丸ごと無駄にする。2022年3月に環境省が発表した一般廃棄物の処理コストは2兆円を超えている。日本のごみ焼却率は80%近くと、OECD加盟国のうちダントツに高い一方、リサイクル率は非常に低い。