令和4年4月の鶏卵卸売価格(東京、M玉基準値)は、1キログラム当たり211円(前年同月比30円安)と前年同月を下回った(図1)。前年同月の価格が令和2年度シーズンの高病原性鳥インフルエンザ(以下「HPAI」という)の発生による生産量の減少により高い水準で推移していたため、前年同月を下回った。なお、過去5カ年の4月平均との比較では、やや上回る結果となった。
卸売価格は、例年、最需要期の12月に向けて上昇した後、年明けに下落し、春先にかけて再び上昇する傾向がある。4月の同価格は、月初の同200円から段階的に上昇し、月間の上昇幅は20円となった。本年は、2月および3月の採卵鶏の養鶏場におけるHPAIの発生は落ち着いていたものの、4月に入り、北海道などの養鶏場でHPAIが発生したことなどによる生産量の減少や3月のまん延防止等重点措置の解除による需要の回復を受けて、同価格が上昇したものとみられる。
今後について、供給面は、HPAI発生に伴う殺処分の影響などにより抑えられた生産量は回復に向かうとみられる。また、鶏卵の生産動向の指標となる採卵用めすひな餌付け羽数の動向を見ると、3年9月以降、4年1月を除いて前年を上回って推移している(図2)。餌付けされたひなが産卵を開始する約5カ月後から少しずつ生産量に影響が出始めるとされていることから、生産量は前年を上回って推移することが見込まれる。
需要面では、例年の傾向として梅雨や気温の上昇による食欲減退からテーブルエッグの消費量が減少が見込まれる一方、まん延防止等重点措置の解除などにより、業務向けや外食向けでは緩やかな回復が続くとみられる。しかしながら、食品価格の相次ぐ値上げを背景とした消費者意識の変化が、今後の鶏卵需要にどのように影響していくのかを注視していく必要があると思われる。
鳥インフルエンザの発生状況
農林水産省によると、令和3年11月10日以降、HPAIの発生が確認され、発生農場では飼養家きんの殺処分や移動制限などの防疫措置が実施された。このうち、養鶏場(採卵鶏)での発生については、4年5月14日現在、計7道県12事例が確認されている(表1)。
なお、農林水産省の畜産統計(令和3年2月1日現在)では、北海道の採卵鶏飼養羽数が665万2000羽となっていることから、4月に白老町で殺処分対象となった約52万羽は、北海道の採卵鶏飼養羽数の約8%に相当する。
令和2年の市町村別鶏卵産出額、出水市が100億円を超える
令和4年3月29日に農林水産省が「令和2年市町村別農業産出額(推計)(注1)」を公表した。令和2年の鶏卵産出額の上位市町村(注2)を見ると、1位の鹿児島県出水市は101億3000万円(前年比3.9%増)と前年から3億8000万円増加し、出水市の鶏卵産出額としては初めて100億円を超えた(表2)。2位の新潟県村上市は87億6000万円(同7.9%増)と前年から6億4000万円増加し、上位市町村の中で最も産出額の伸びが大きかった。次いで、香川県三豊市は79億9000万円(同4.2%増)と、2年11月および12月に高病原性鳥インフルエンザ発生の影響を受けた期間があったものの、年計としては前年を上回った。続く静岡県富士宮市は77億6000万円(同1.5%減)、鹿児島県南九州市は77億6000万円(同3.9%増)となった。
また、令和2年の都道府県別の鶏卵産出額において1位の茨城県では、7位の坂東市は72億円(前年比0.1%減)、8位の小美玉市は69億9000万円(同0.1%減)に達し、これらをはじめ、かすみがうら市(17位)、や石岡市(18位)など産出額の大きい市町村が並んでいる。
(注1) 市町村別推計は、生産農業所得統計(都道府県別推計)の都道府県別農業産出額を、農林業センサスの畜種別飼養羽数を用いて按分したものである。そのため、市町村毎の価格の差は反映されていない。
(注2) 個人又は法人その他の団体に関する秘密を保護するため、統計数値が非公表で順位の確認が不明なものについては、ハイフン(−)としている。
(畜産振興部 郡司 紗千代)