取引頭数の減少により肉牛価格は下落
豪州肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は続落し、2022年4月19日時点で1キログラム当たり1072豪セント(1004円:1豪ドル=93.70円
(注1))となった(図)。この動きは、牛群再構築の進展の影響も考えられるが、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、特に豪州の祝日(4月15日のグッドフライデー、4月18日のイースターマンデー)の影響で、食肉加工施設の稼働率が低下することに伴い、家畜市場の取引頭数が減少したことも価格下落要因として考えられる。
(注1) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年4月末TTS相場。
豪雨による物流混乱などにより、牛肉輸出量は引き続き停滞
豪州農業・水・環境省(DAWE)によると、2022年3月の牛肉輸出量は7万4348トン(前年同月比10.9%減)とかなりの程度減少し、同年の第1四半期(1〜3月)の累計でも17万7223トン(前年同期比11.3%減)とかなり大きく減少した(表)。現地報道によると、第1四半期の輸出量は、過去10年間の平均値である24万1000トンを27%も下回ったとしている。この要因として、牛群再構築による牛肉生産量の停滞に加え、同年1月に新型コロナウイルスのオミクロン株感染拡大に伴い、一部の食肉加工施設で人員不足により生産に支障を来したことや、2月下旬から3月にかけての記録的な豪雨により物流が滞り、牛肉輸出の主要港となっているブリスベン港が一時稼働停止となったことなどが挙げられている。
輸出先別に見ると、最大の輸出先である日本向けは2万83トン(前年同月比0.2%減)と前年同月並みとなり、同年累計では4万6529トン(前年同期比8.0%減)とかなりの程度減少した。現地報道によると、日豪EPAや環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)に基づき、4月から豪州産牛肉の関税が段階的に引き下げられることにより、通常、関税引き下げ前の毎年3月の日本向け輸出量は低水準になる傾向があるとしている。
中国向けは、牛肉輸出が停止されている豪州の食肉加工施設が8カ所ある(注2)にもかかわらず、1万3483トン(前年同月比9.7%減)、同年累計でも3万3794トン(前年同期比5.5%減)と減少したのみで、引き続き日本に次ぐ輸出量となっている。
(調査情報部 国際調査グループ)