2022年の牛肉生産量は3年ぶりに増加の見込み
米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、2021年のブラジルの牛肉生産量は950万トン(前年比5.9%減)と、2年連続で減少した(図1)。これは、18〜19年に旺盛な輸出需要などを受けて雌牛がと畜に回された結果、と畜仕向けの頭数が減少したためである。しかしながら、22年の牛肉生産量は985万トン(同3.7%増)と3年ぶりに増加に転じると見込まれている。これは、牛肉の国際価格が高水準で推移していることやと畜仕向け頭数が回復していることなどが要因とみられる。
21年の牛肉輸出、中国向け輸出停止措置が大きく影響
ブラジル経済省貿易局(SECEX)によると、2021年の牛肉輸出量は156万198トン(前年比9.5%減)と7年ぶりに前年を下回った(表)。これは、同年9月4日にブラジルで非定型BSEの発生が確認され、一時的に中国向けなどに輸出制限措置が講じられたためである。なお、輸出額については、旺盛な牛肉需要から単価が大幅に上昇したことで前年を上回った。
輸出の内訳を見ると、中国向けは同年12月15日に全面的に輸出が再開されるまで約3カ月間制限されたことから、72万3170トン(同16.8%減)と前年を大幅に下回った。一方、20年2月に輸出が再開された米国向けは、特に中国の輸出制限後に輸出が加速し、8万5800トン(同4.3倍)と、中国、香港、チリに次ぐ4番目の輸出先となった。
なお、中国向けは、輸出制限措置解除後に輸出量が回復する一方、米国向けも高水準で推移している。このため、22年1〜3月の輸出量は46万9026トン(前年同期比36.6%増)と前年を大幅に上回っている(図2)。
肥育牛価格は高値で推移
サンパウロ大学応用経済研究所(CEPEA)によると、2021年の肥育牛価格は、飼料など生産費の上昇などの影響で上昇し、1キログラム当たり20レアル(534円:1レアル=26.69円(注))前後で推移した(図3)。同年10月には、中国向けなどの輸出制限により同17レアル(454円)程度まで下落したもののその後回復し、直近22年4月25日時点では同21.93レアル(585円)と高値で推移している。
(注) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」2022年4月末TTS相場。
(調査情報部 井田 俊二)