飼養頭数、ほぼすべてのカテゴリーで前年比減
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)によると、2022年3月1日時点の豚総飼養頭数は、7220万9000頭(前年比2.3%減)となった(表1)。豚飼養頭数を左右する12月〜翌2月期の1腹当たりの産子数は同0.1%増となったが、分娩母豚頭数が同1.0%減少したことで産子数も同1.0%減となった。USDAによると、22年3〜5月期および6〜8月期の分娩予定母豚頭数も前年同期比減と予測していることから、今後も肥育豚頭数の増加は見込めず、豚肉の供給減少は続くとみられる。USDA/NASSは、分娩予定母豚を含む繁殖豚頭数の減少は、飼料や燃料、医薬品などの生産コスト上昇に加えて、カリフォルニア州法
(注1)への対応など中長期的な取り組みに関し、市場環境リスクと不確実性に対する生産者の反応を反映したものと分析している。
(注1) 海外情報「母豚の飼育環境規制強化に関するカリフォルニア州法の施行が停止(米国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003178.html)を参照されたい。
卸売価格の上昇率は鈍化
USDA農業マーケティング局(AMS)によると、2022年3月の豚肉卸売価格は100ポンド当たり105.73米ドル(1キログラム当たり302.70円:1米ドル=129.86円(注2)、前年同月比4.4%高)となった(図)。豚肉卸売価格は21年から前年同月を上回って推移してきたが、直近の1、2月が10%を超える上昇率であったのに対し、3月の上昇率は4.4%と鈍化している。これについてUSDAは、国内外からの需要が減少したことを示していると分析している。
(注2) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年4月末TTS相場。
2月の輸出量は大幅に減少
USDA経済調査局(ERS)によると、2022年2月の豚肉輸出量は22万600トン(前年同月比17.9%減)と大幅に減少した(表2)。減少の一因として、昨年から続く中国からの輸入需要の減退が挙げられるが、中国国内の豚肉需給が緩和する中で、この傾向は今後も続くと予想される。日本を含め主要輸出先への輸出量が減少している中、メキシコ向けは同41.5%増と大幅に増加した。USDAは、ドル/ペソ相場が1月以降安定していることに加え、メキシコ向け主要輸出品目である骨付きモモの価格が前年同期を下回っていることから、今後もメキシコへの輸出は堅調に推移するであろうと予測している。一方で、米国産豚肉価格の上昇は、港湾の混雑と輸送コストの上昇も相まって、特にアジア向け輸出需要の減少につながるのではないかという懸念も示している。
(調査情報部 上村 照子)