豚総飼養頭数は前年比0.6%増
カナダ統計局が公表した2022年1月1日現在の豚飼養頭数によると、同国全体で1411万頭(前年比0.6%増)となった(表1)。内訳を見ると、肥育豚のうち81キログラム以上の頭数の伸びが目立っているが、同局は、食肉処理場の稼働率低下により養豚生産者に肥育豚が滞留したことが要因と分析している。
カナダ国内では、労働力不足が深刻な問題となっており、特に食肉処理場をはじめとする食品製造業での労働力不足が顕著とされている。また、食肉処理場でのストライキやCOVID-19の流行などが重なったことから、21年のと畜頭数は前年比3.3%減となった(図)。ただし、22年2月からは前年同月を上回ると畜頭数で推移しており、労働力問題に関してカナダ政府も外国人労働者の入国規制緩和などの実施に動いていることから、今後は安定して推移するとみられる。
22年の米国向け生体豚輸出は堅調と予測
豚飼養頭数が増加する中で、2021年の米国への生体豚輸出は、国内での食肉処理の停滞と米国の高い需要により前年比26.0%増と堅調に推移した。22年のカナダの生体豚輸出について米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は、肥育もと豚の輸出は21年と同様、堅調に推移すると予想している。また、肥育豚については、ケベック州での肥育豚の滞留が第1四半期に解消されるため前年比で減少するものの、カナダ国内の大手食肉処理施設の処理頭数縮小により、依然堅調な輸出が維持されると予測している。
中国向け輸出量の減少が顕著
カナダ統計局によると、2022年2月の豚肉輸出量は9万5800トン(前年同月比3.3%減)とやや減少した(表2)。輸出先別に見ると、中国向けは1万5800トン(同48.9%減)と大きく減少した。これは、中国の輸入豚肉需要の後退に加え、カナダ国内の中国向け食肉処理場で作業員にCOVID-19が確認されたことから、同国向けの輸出停止が続いていることが影響している。一方で、豚肉生産量が減少傾向にある米国向けは2万9500トン(同68.3%増)、経済の回復により豚肉需要が好調なメキシコ向けは1万200トン(同56.7%増)と、いずれも大幅に増加した。
また、USDA/FASによると、21年のカナダの年間豚肉輸出量は減少しているものの、輸出額が増加していることから、付加価値の高い製品の輸出が増えていることがうかがえるとしている。
(調査情報部 上村 照子)