降雨などから生乳生産量は低迷
デーリー・オーストラリア(DA)によると、2022年2月の生乳生産量は酪農主産地のビクトリア州などで減少した結果、58万296キロリットル(59万7705トン相当、前年同月比6.1%減)とかなりの程度減少した(図1)。
豪州の生乳生産量は、ラニーニャ現象に伴う降雨が牧草の品質低下を招いたことや、夏季の高温多湿や飼養頭数の減少などから、21年6月以降、前年同月を下回って推移している
(注1)。21/22年度(7月〜翌6月)の2月までの累計でも、612万2112キロリットル(630万5776トン相当、前年同期比3.0%減)と低迷している。
今年度の生乳生産量についてDAは、年度開始直前の21年6月時点では前年度比0〜2%増と見込んでいたが、22年3月には同1〜3%減の859万〜877万キロリットル(885万〜903万トン相当)と下方修正した。また、豪州農業資源経済科学局(ABARES)も同月、今年度の生乳生産量は877万キロリットル(同1.0%減)との見込みを公表した
(注2)。
(注1) 海外情報「2021/22年度の生乳生産見通し、収益は改善も生産は伸び悩み(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002999.html)」を参照されたい。
(注2) 本稿で紹介するABARESの予測についての詳細は、『畜産の情報』2022年5月号「豪州の農畜産物需給見通し〜2022年豪州農業需給観測会議などから〜」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_002169.html)を参照されたい。
当初乳価、22/23年度も高水準か
豪州では、生乳生産量の減少により乳業各社の生乳確保競争が激化しており、ABARESは、生乳確保を目指す乳業の思惑から2022/23年度の当初乳価
(注3)は過去最高額になると予測している。現地報道によると、22年4月に先陣を切って当初乳価を公表したベガチーズは、同社の当初乳価として過去最高の生乳の固形分
(注4)1キログラム当たり8.40豪ドル
(注5)(787円:1豪ドル=93.70円
(注6))を提示した。
なお、オランダの農協系金融機関ラボバンクも同様に高水準(豪州南部で同8.40豪ドル)を予測しているが、投入コストの上昇により酪農家の収益は圧迫されると指摘している。
(注3) 年度当初に乳業各社などが設定する生産者支払乳価の最低価格。「酪農業界における行動規範(Dairy code of conduct)」に基づき、毎年6月1日までの公表が義務付けられている。
(注4) 乳脂肪分および乳たんぱく質。
(注5) 同社に全量出荷するビクトリア州およびリベリナ地方の酪農家に対する当初乳価。
(注6) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年4月末TTS相場。
バターおよびバターオイルとチーズの輸出量は減少
DAが発表した2022年2月の主要乳製品4品目の輸出量は、脱脂粉乳と全粉乳がインドネシアやベトナムなどアジア向け輸出の伸びなどを受けて増加した。一方、バターおよびバターオイルとチーズは主要輸出先である中国向けの不振などを受け大幅に減少した(表、図2)。
(調査情報部 阿南 小有里)