(1)バター
令和2年度の推定出回り量7万4700トン(機構調べ(注2))について流通経路および業種別、用途別消費量の推計を行った結果、次の通りとなった。
(注2) 機構調べは、今回の調査結果に基づき推定したものを指す。以下同じ。
ア 流通経路
推定出回り量のうち、国産品((1)乳業メーカーの自社製造と在庫取り崩しの合計)は5万9600トン(出回り量に対する構成比79.8%。前年度比3.7%減)、輸入品((2)機構の輸入放出を通じて乳業メーカーが保有した分の取り崩しなどと(3)乳業メーカー以外への機構の輸入放出の合計)は1万5100トン(同20.2%。前年度比24.5%減)となった(図1)。
乳業メーカーの利用(社内消費)は6500トン(同8.7%)、乳業メーカーからの社外販売は5万7300トン(同76.7%)、機構から一次卸への売り渡しは1万900トン(同14.6%)となった。
乳業メーカーなどから需要者に供給される流通経路では、一次卸を通じた販売が5万5900トン(同74.8%)と大きな割合を占めている。バターは、洋菓子やパンなどの加工食品や外食などの原材料としても使用されることから、需要者は多岐にわたっている。このため、大口だけでなく小口需要者にも対応するため、流通段階での卸売業者の役割は、他の原料乳製品と比べて大きくなっている。
イ 業種別消費量
業種別消費量を見ると、業務用は4万6300トン(推定消費量に対する構成比62.0%)と最も多く、家庭用(小売業向け家庭用)は2万1900トン(同29.3%)、乳業メーカー(社内消費)は6500トン(同8.7%)となった(表1)。
業務用の内訳では、菓子メーカーが2万2100トン(同29.6%)で最も多い。国産品と輸入品の業種別消費量の内訳を見ると、国産品は家庭用が全体の35.1%と最も多く、次いで菓子メーカー向けが28.7%となった。輸入品は菓子メーカーが全体の33.1%と最も多く、次いで加工油脂メーカーが21.9%となり、家庭用は6.6%と少ない。
令和2年度は、コロナ禍による内食需要増を背景に家庭用が増加した一方で、外食自粛や営業時間の短縮などから地域の菓子店を含む菓子メーカーや外食・ホテル業を中心に業務用は減少した。
なお、消費量が減少したのに対し、生産量がかなりの程度増加したため、期末在庫量は前年度比34.9%増の3万8862トンとなった。
ウ 用途別消費量
バターの用途別消費量の割合を見ると、家庭用が2万1900トン(構成比29.3%)と最も多く、次いで品質や風味などから国産品を重視する菓子・デザート類向け2万1700トン(同29.0%)、パン類向けが7000トン(同9.4%)、外食・ホテル業向けが6700トン(同9.0%)となった(図2)。
バターの用途別仕向けを令和元年度と比較すると、総消費量が減少(前年度比8.8%減)する中、家庭用向け(同12.9%増)が大きく伸びる一方で、パン類向け(同29.3%減)、外食・ホテル業向け(同19.3%減)が大幅に減少、従前から割合が高い菓子・デザート類向け(同15.6%減)はかなり大きく減少した(表2)。
(2)脱脂粉乳
令和2年度の推定出回り量13万7600トン(機構調べ)について、流通経路および業種別、用途別消費量の推計を行った結果、次の通りとなった。
ア 流通経路
推定出回り量のうち、国産品((1)乳業メーカーの自社製造と在庫取り崩しの合計)は13万5000トン(推定出回り量に対する構成比98.1%。前年度比13.4%増)、輸入品((2)機構の輸入放出を通じて乳業メーカーが保有した分の取り崩しなどと(3)乳業メーカー以外への機構の輸入放出の合計)は2600トン(同1.9%。同84.7%減)となった(図3)。
また、乳業メーカーの利用(社内消費)は4万4500トン(同32.3%)、乳業メーカーからの社外販売は9万1600トン(同66.6%)、機構から一次卸への売り渡しは1500トン(同1.1%)となった。
脱脂粉乳は、一般的に加工製品向けの原材料であることから家庭用の消費量は非常に少なく、はっ酵乳や乳飲料などを生産する乳業メーカー(社内消費)の割合が高いことが特徴である。また、卸売業者を経由せずに業務用需要者に直接販売される割合が全体の18.4%で、バター(直販割合10.0%)と比べて高い水準にある。これは、大口の需要者が特定の業種(はっ酵乳など)に集中していることによるものである。
イ 業種別消費量
脱脂粉乳の業種別消費量を見ると、業務用が9万2800トン(推定消費量に対する構成比67.4%)と最も多く、乳業メーカーの社内消費が4万4500トン(同32.3%)と続き、家庭用が300トン(同0.2%)とわずかであった(表3)。
業務用の内訳では、はっ酵乳・乳酸菌飲料メーカーが2万7200トン(同19.8%)と最も多く、次いで乳業・アイスクリームメーカーが2万3800トン(同17.3%)、その他が1万4800トン(同10.8%)となっている。その他は当機構がコロナ関連対策として飼料用への用途変更等に対する支援を実施したことから、主に飼料向けとなっている。また、国産品は各業種で幅広く使用されている一方、輸入品は飲料メーカーおよび加工油脂メーカーの計が全体の8割を消費する結果となった。
なお、脱脂粉乳の期末在庫量は前年度比6.3%増の8万1175トンと増加した。当機構によるコロナ関連対策事業で飼料向けとして使用されたものの、消費をけん引していたはっ酵乳や乳飲料の需要が一服したことなどによるものである。
ウ 用途別消費量
脱脂粉乳の用途別消費量を見ると、はっ酵乳・乳酸菌飲料向けが6万2900トン(構成比45.7%)と最も多く、全体の半数近くを占めている。次いで、乳飲料向けが1万6100トン(同11.7%)、アイスクリーム類向けが8300トン(同6.0%)となった(図4)。
業務用脱脂粉乳の用途別消費量のうち、上位3用途について令和元年度と比較すると、はっ酵乳・乳酸菌向けが前年度比1.3%増とわずかに増加したものの、乳飲料向けが同19.1%減、アイスクリーム類向けが同24.5%減とそれぞれ大幅に減少した(表4)。一方、その他は当機構のコロナ関連対策事業等の実施により、飼料向けや輸入調製品との置き換えに使用されたことから3万2700トン(同90.1%増)と大幅に増加した。
(3) チーズ
ア ナチュラルチーズ(プロセスチーズ原料用以外)
令和2年度のナチュラルチーズ(プロセスチーズ原料用以外)の消費量22万4500トン(機構調べ)の種類別および業種別消費量の推計を行った結果、次の通りとなった(図5)。
(ア) 種類別消費量
総消費量22万4500トンのうち、輸入品が19万1000トン(総消費量に対する構成比85.1%)、国産品が3万3500トン(同14.9%)となった。種別の内訳は、シュレッドタイプが12万3900トンと最も多く、次いでクリームタイプが5万9900トンとなった。
シュレッドタイプは輸入品が11万4600トン、国産品が9300トンであり、消費量の9割を輸入品が占めている。また、クリームタイプも輸入品が5万5400トン、国産品が4500トンと、同じく輸入品が9割を占めた。
シュレッドタイプの業種別の利用内訳は、家庭用が3万6300トン(シュレッドタイプ推計消費量に占める構成比29.3%)、次いで宅配ピザ、乳業メーカー、調理食品メーカー、外食・ホテルの順となった。
国産品を種類別に見ると、シュレッドタイプが最も多く(国産品全体に占める割合は27.8%)、次いでフレッシュ・モッツァレラタイプ、カマンベールタイプ、クリームタイプの順となっており、フレッシュ・モッツァレラタイプやカマンベールタイプについては前年度から増加している。
全体的に見ると、過去最高の前年度から減少している中、シュレッドタイプやフレッシュ・モッツァレラタイプ、カマンベールタイプが堅調であった。
(イ) 業種別消費量
業種別の内訳では、家庭用が6万5700トン(全体に占める割合は29.3%)と最も多く、次いで乳業メーカーが3万8000トン、調理食品メーカーは3万3800トンとなった(表5)。家庭用のうち、輸入品は4万8700トン、国産品は1万7000トンと、輸入品が全体の7割を占めた。また、乳業メーカーについても、輸入品が3万2400トンと全体の8割強を占めた。特に、コロナ禍において家庭用の増加が顕著となっている。
イ プロセスチーズ
令和2年度のプロセスチーズの国内製造量13万4300トンについて、機構が流通経路および業種別消費量の推計を行った結果、次の通りとなった(図6)。
(ア) 流通経路
国内製造量の大半である13万3500トン(国内製造量に対する構成比99.4%)が、乳業メーカーなどからの社外販売であり、その中で、一次卸への売り渡しが8万4300トン(同62.8%)である一方、全需要の7割を占めている家庭用(小売業)への直接販売も4万2200トン(同31.4%)と高い割合にある。
(イ) 業種別消費量
家庭用は9万6100トン(消費量に対する構成比71.6%)と最も多く、業務用は3万7400トン(同27.8%)、乳業メーカー(社内消費)は800トン(同0.6%)となった(表6)。
また、業務用の内訳を見ると、料理への使用が主体の外食・ホテル業が2万1400トン(同15.9%)と最も多く、次いで調理食品メーカー、サンドウィッチをはじめとする調理パンなどへの使用が多いパンメーカー、菓子メーカーの順となった。