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国内需給動向【鶏卵】 畜産の情報 2022年7月号

5月の鶏卵卸売価格、前年同月を下回るも高水準で推移

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 令和4年5月の鶏卵卸売価格(東京、M玉基準値)は、前年同月の同価格が令和2年度シーズンの高病原性鳥インフルエンザの大規模な発生による生産量の減少から高水準で推移していたため、1キログラム当たり219円(前年同月比39円安)と前年同月を下回った(図1)。なお、過去5カ年の5月平均との比較では、11.7%高とかなり大きく上回る結果となった。
 例年、年明けに下落した同価格は、春先に向けて上昇し、夏の低需要期に再び下落する傾向がある。5月の日ごとの推移を見ると、前月の4月26日に上伸した220円から始まり、例年通り、大型連休明けは滞留玉により入荷量が増加したものの、低下することなくもちあいが続き、5月30日に215円に下落した。


 
 これは、5月上旬は3年ぶりにCOVID-19対策に伴う移動制限のない大型連休となり人出が増加したことから、業務・加工向けの荷動きが好調となったものとみられる。5月下旬は各地で最高気温が30度を超え、気温の上昇に伴う需要の減少を受けて同価格が低下したものとみられる。また、まん延防止等重点措置の解除に伴う内食需要の低下などから、量販店向けの引き合いに落ち着きが見られたという声も聞かれた。
 今後について、供給面は、採卵用めすひなえ付け羽数の出荷・え付け動向からは生産量が増加基調となることが見込まれる。しかしながら、従来、採卵養鶏の経営費の約5割を占める飼料費が、トウモロコシをはじめとする原料価格の高騰により増加している状況にある(図2)。そのため、減羽などの生産計画の見直しが行われるという見方もあり、不透明な状況となっている。需要面では、夏季の食欲減退といった季節要因に加え、内食需要の落ち着きが見られることから、家計消費による需要の増加も見込みにくい状況となっている。一方、外食需要が戻り始めたことに伴う業務用需要の回復や、外国人観光客受け入れが条件付きで再開されたことに伴うインバウンド需要の回復が期待されている。

 
鶏卵の家計消費購入数量、まん延防止等重点措置解除後も内食需要は継続
 国内で消費される鶏卵の96%以上が国産品によって賄われていることから、わずかな需給の変化が卸売価格の形成に変動を与える構造となっている。また、消費量全体の約5割が家計消費へ、約3割が業務用へ、約2割が加工用へ仕向けられているとされており、家計消費の動向が卸売価格に与える影響は大きい。
 家計消費の動向を見ると、令和4年4月の鶏卵の購入数量は、全国1人当たり917グラム(前年同月比6.2%減)と前年同月をかなりの程度下回った(図3)。また、COVID?19拡大前の過去5カ年(平成27年〜令和元年)の4月の平均購入数量(同884グラム)と比べると、同33グラム(M玉換算でおおよそ0.5個相当(注))多い結果となった。
 COVID-19拡大を背景とした内食需要の拡大から、2年2月以降、鶏卵の消費量が伸び、12カ月連続で前年同月の購入数量を上回った。その後、2年の水準を下回ってはいるものの、年間を通して高水準での推移が続いている。
 一方、昨年からの小麦や食用油脂などの高騰を背景とした食料品価格の相次ぐ値上げを受け、消費者の節約志向がさらに高まることなどが予想されている。そのため、今後の消費者の意識の変化がどのように鶏卵の消費動向に反映されていくのかを注視する必要がある。

(注) 鶏卵M玉の平均卵重61グラム/個で換算した数量。家計調査の「卵」の項目には、鶏卵の他、ヨード卵、烏骨鶏(うこっけい)の卵、ちゃぼの卵、うずらの卵、あひるの卵、くんせい卵、ピータン、うずら卵の水煮、ゆで卵、温泉卵が含まれる。


 

(畜産振興部 郡司 紗千代)