韓国・中国向け輸出が好調
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2022年3月の牛肉輸出量は13万7772トン(前年同月比1.2%増)と引き続き前年同月を上回った(表)。これにより、22年第1四半期の輸出量は38万3649トン(前年同期比6.2%増)となった。
米国食肉輸出連合会(USMEF)は、第1四半期の輸出先首位となった韓国向け輸出量の伸びを、同国内における小売需要の増加が要因としている。また、中国向け輸出量も同61.8%増と大幅に増加し、日本やメキシコ向けなどの減少を相殺した形となった。中国向けについてUSMEFは、3月末から上海で行われたロックダウンにより4月以降の輸出実績に影響が出てくるとしている。
一方でUSDAは、台湾や中南米および中東地域など比較的輸出規模が小さい市場の経済や観光業の回復が輸出量の増加を後押ししており、主要輸出国のみならず広範囲な輸出先での米国産牛肉需要の増加が好調な輸出に寄与しているとしている。
フィードロット飼養頭数は引き続き高水準
USDA全国農業統計局(NASS)によると、2022年4月のフィードロット導入頭数は180万9000頭(前年同月比0.9%減)、出荷頭数は189万3000頭(同2.2%減)といずれも減少した。この結果、22年5月1日時点のフィードロット飼養頭数は1196万7000頭(同2.1%増)となり、引き続き高い水準を維持している(図1)。
USDA/NASSによると、22年4月の牛と畜頭数は275万8500頭(同1.3%減)となった(図2)。これは、干ばつのため肉用経産牛のと畜頭数は引き続き多いものの、全体の8割弱を占めるフィードロット出荷頭数の減少が要因として大きいためと考えられる。
しかし、高水準のフィードロット飼養頭数と2、3月のと畜頭数が多かったことで、USDAは22年の牛肉の生産量予測を上方修正した。ただし、23年は牛の供給が減少すると見込まれることから、牛肉生産量は22年よりも減少すると予測している。
肉用経産牛と畜の増加で、期末在庫量は大幅増
2022年4月の牛肉の期末在庫量は24万2500トン(前年同月比17.3%増)と大幅に増加した(図3)。例年では春に牛肉在庫は減少するが、今年はその傾向が見られない。現地報道によると、骨なし牛肉の在庫量が多く、その半分以上は肉用牛繁殖経営の多い米国南部の西側の地域であることから、これら地域での干ばつにより1〜4月の肉用経産牛のと畜頭数が増えたことが在庫増の一因としている。また、太平洋側の地域の在庫が増加しているのは、アジア向け輸出の増加によるものと分析している。
(調査情報部 上村 照子)