スペインの豚肉生産量、主要生産国の中で唯一前年同月を上回る
欧州委員会によると、2022年2月の豚肉生産量(EU27カ国)は、前年同月比3.7%減の187万1560トンとなった(図1、表)。2月は、1頭当たりの枝肉重量が94.8キログラム(同1.2%減)、と畜頭数が1974万頭(同2.5%減)といずれも下回ったことが生産減に影響した。
同月の生産量を主要生産国別に見ると、21年にEU最大の豚肉生産国となったスペインは同3.8%増と好調な生産が続いている。一方で、第2位のドイツ(同11.0%減)をはじめ、フランス(同1.5%減)、ポーランド(同3.7%減)、デンマーク(同4.1%減)、オランダ(同2.0%減)、イタリア(同6.9%減)など、スペイン以外の主要生産国は軒並み前年同月を下回った。
欧州委員会が4月5日に公表した短期的需給見通しによると、21年後半からの生産コストの増加や豚枝肉卸売価格の低迷による収益性の悪化が繁殖母豚の減少を招いたとしている。また、飼料価格の上昇により、飼料コストを抑えるため、通常より短い肥育期間でと畜され、枝肉重量の低下が想定されることから、22年の豚肉生産量は2290万4961トン(前年比3.0%減)と減少が見込まれている。
豚枝肉卸売価格は5月に入り、下落に転じる
欧州委員会によると、2022年4月の豚枝肉卸売価格(EU27カ国)は、前年同月比21.9%高の100キログラム当たり190.75ユーロ(2万6564円:1ユーロ=139.26円
(注1))となった(図2)。
同価格の推移を週ごとに見ると、同年2月の第4週以降から上昇傾向で推移し、4月に入ると同190ユーロを超える水準に達した。しかし、5月に入ると下落に転じ直近の5月16日の週は同185.17ユーロ(2万5787円)となった。
なお、3月25日から4月29日まで実施された豚肉の民間在庫補助
(注2)の累計申請数量は4万7541トンとなり、そのうち、約6割の2万7695トンが60日の保管期間で申請されている。そのため、今後、保管されていた豚肉が順次市場に放出されることになる。一方で、現地報道によると、消費者が食料やエネルギー価格などの上昇に直面しているため、需要期の夏に向けた例年のような価格上昇は見込まれないとしている。豚肉生産量が減少する中で、同価格の反発は不透明な状況にあり、今後の動きが注目されている。
(注1) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年5月末TTS相場。
(注2) 海外情報「欧州委員会、豚肉の民間在庫補助実施を発表(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003227.html)を参照されたい。
(調査情報部 小林 智也)