2022年1〜3月の鶏肉生産量、前年同期比2.4%増
ブラジル地理統計院(IBGE)によると、2022年1〜3月の鶏肉生産量は376万2000トン(前年同期比2.4%増)と前年同期をわずかに上回った。同国の鶏肉生産量は19年以降、増加傾向が続いている(図1)。インフレによる国内消費の停滞や生産コスト増による収益性の低下があるものの、海外からの堅調な需要が要因とみられる。
22年1〜4月の鶏肉輸出量、輸出競合国の供給制限を背景に増加
ブラジル経済省貿易事務局(SECEX)によると、2022年1〜4月の鶏肉輸出量は141万3977トン(前年同期比8.0%増)と前年同期をかなりの程度上回った(表)。米ドルに対するレアル安の為替相場のほか、アジア、EUおよび北米などにおける高病原性鳥インフルエンザの発生やウクライナ情勢の影響により輸出競合国からの鶏肉供給が制限されたためとみられる。
輸出先別に見ると、最大の中国向けは19万7011トン(同2.9%減)と前年同期をわずかに下回った。しかしながら、輸出競合国である米国およびタイなどからの供給が制限され、ブラジルにとっては追い風になるとみられる。サウジアラビア向けは8万7285トン(同45.4%減)と大幅に減少した。これは21年5月、ブラジル産輸入鶏肉でサルモネラ汚染が確認されたとしてブラジルの鶏肉処理場(11カ所)からの輸入が停止されたためである。一方、同じ中東のアラブ首長国連邦向けは16万4304トン(同80.3%増)と大幅に増加した。サウジアラビア向けの一部が同国に仕向けられたとみられる。また、日本向けは12万8657トン(同0.1%減)と前年同期並みとなった。
鶏肉卸売価格は22年2月ごろから上昇に転じ高値で推移
サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、ブラジルの鶏肉卸売価格(サンパウロ州、名目価格)は、国内外からの堅調な需要を背景に20年5月ごろから上昇傾向で推移し、21年9月中旬には統計が公表された04年以降で最高値となる1キログラム当たり8.57レアル(223円:1レアル=26.02円
(注))を記録した(図2)。その後は価格高騰から需要が減退し、21年10月以降、価格は下落傾向に転じた。しかし、22年2月ごろからは、ウクライナ情勢や米国での高病原性鳥インフルエンザの発生などによる輸出競合国の供給制限や生産コストの上昇を反映して価格は再び上昇に転じ、5月中旬には同7.65レアル(199円)となっている。
(注) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年5月末TTS相場。
(調査情報部 井田 俊二)