乳価は引き続き上昇傾向で推移
米国農務省(USDA)によると、2022年4月の全米平均総合乳価は、生乳100ポンド当たり27.1米ドル(1キログラム当たり77.02円:1米ドル=129.21円
(注1)、前年同月比47.3%高)と国内外からの堅調な需要を背景に27米ドルを越える記録的水準となった(図1)。また、穀物相場の上昇から飼料コストが増加している中で、同月の酪農マージン
(注2)も、前年同月比81.5%増の同12.29米ドル(同34.93円)と増加している。
(注1) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2022年5月末TTS相場。
(注2) 酪農家のセーフティーネット制度である酪農マージン保障プログラム(DMC)で算定される全米平均総合乳価と飼料費の差額としての収益。DMCでは、 酪農マージンが発動基準を下回った場合、補填が発動される。
乳用経産牛飼養頭数・生乳生産量ともに前年同月比減
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)によると、2022年4月の乳用経産牛飼養頭数は、前年同月比1.0%減の940万2000頭となった(図2)。
記録的な乳価の上昇により、酪農家の増頭意欲が高まっているとみられ、飼養頭数は22年1月を底に拡大に転じているが、飼料価格が依然として上昇しているほか、インフレによる生産コストの上昇や労働力不足により増頭の伸びに歯止めがかかっている。この結果、4月の生乳生産量は、同1.0%減の868万6000トンとなった(図3)。
乳製品の輸出量は好調に増加
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2022年3月の乳製品輸出量は、脱脂粉乳とホエイが前年同月比で減少したものの、バターやチーズの大幅な伸びから乳製品全体としては好調に推移している(表)。
品目別に見ると、バターは国際価格が上昇する中で、米国産が相対的に安価となったことからカナダ向けが好調となるなど6100トン(前年同月比47.5%増)と大幅に増加した。このため、22年第1四半期は1万4700トン(前年同期比41.1%増)と四半期としては14年第2四半期以来の高水準を記録した。
チーズは、メキシコ、韓国向けが好調なことにより、22年3月は4万1700トン(前年同月比12.9%増)となった。特にメキシコ向けについては、外食や観光需要の回復により大幅に増加した。
一方、ホエイは1万9600トン(同17.9%減)と大幅に減少したものの、タンパク質濃縮ホエイ(WPC)は1万5300トン(同13.7%増)とかなり大きく増加した。
アメリカ乳製品輸出協会(USDEC)によると、今後、生乳の供給不足、国内需要の高まりによる輸出の制約、物流の停滞、価格の高騰による国外の低所得層消費者の購買意欲の低下が輸出の伸びに影響を及ぼすとしている。
(調査情報部 伊藤 瑞基)