畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 牛群再構築は継続も、肉牛取引価格は大幅下落

海外の需給動向【牛肉/豪州】 畜産の情報 2022年8月号

牛群再構築は継続も、肉牛取引価格は大幅下落

印刷ページ

牛飼養頭数は増加も、労働力不足が引き続き課題

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は2022年6月、最新の牛肉生産量などの見通しとなる「Industry projections 2022-June update」を公表した(表1)。


 
 これによると22年の牛飼養頭数は、肉牛生産地の多くが降雨に恵まれ、飼料確保が容易となったことで牛群再構築がさらに進むことから、2758万3000頭(前年比5.6%増)と増加が見込まれている。また、24年には2886万6000頭まで増加するとしている。22年の成牛と畜頭数は、豪雨による家畜輸送の停滞や、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)による食肉処理施設の稼働率低下を受け、615万頭(同2.2%増)と前回公表(22年2月)よりも下方修正された。MLAによると、依然として豪州国内の労働力不足が食肉処理施設の稼働率に影響を及ぼしているが、国境の開放に伴う移民ビザの発給が加速することで、労働力不足の解消が期待されるとしている。ただし、新規従事者の研修に最大8カ月を要することから、当面の間、稼働率の回復が牛肉生産の課題としている。また、22年の牛肉輸出量は、牛肉生産量が低調にあることや、世界的な物流の混乱が影響したことで、94万トン(同5.9%増)と前回公表から下方修正された。
 24年の見通しとして、これらの課題が徐々に解消に向かうことで、と畜頭数は740万頭、牛肉生産量は231万トンに達すると予測している。
 

肉牛価格は6月に入り大幅に下落

 肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2022年6月に入って大幅に下落し、同月28日時点で1キログラム当たり1028豪セント(986円:1豪ドル=95.90円(注))と21年9月以来の水準になった(図)。一方、現地報道によると、中長期的な価格見通しとして、牛飼養頭数が回復する中で、牧草の生育に良好な天候が継続し、安定した需要が見込まれることから、今後2〜3年の間はEYCI価格が同1000豪セント前後で推移する可能性があるとする研究機関の報告が紹介されている。

(注) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年6月末TTS相場。
 
 

牛肉輸出量、日本向けは増加

 豪州農業・水・環境省(DAWE)によると、2022年5月の牛肉輸出量は7万9995トン(前年同月比4.6%増)とやや増加した(表2)。現地報道によると、輸出市場では世界的な物流の混乱によりコンテナの確保が引き続き困難な状況にあり、物流や港湾の安定的な操業が課題であるとされている。このような中で、同月の日本向けは2万5606トン(同17.1%増)と大幅に増加し、前月比でも約1.8倍に増加している。
 
 
(調査情報部 国際調査グループ)