肥育豚価格は伸び悩むも、引き続き高水準を維持
カナダ農務・農産食品省(AAFC)によると、2022年5月の肥育豚価格は100キログラム当たり256カナダドル(2万7546円:1カナダドル=107.6円
(注)、前年同月比3.4%安)となり、前年同月を2カ月続けて下回った(図1)。例年であれば夏場のバーベキューシーズンに向けて豚肉需要は高まるところだが、カナダ国内の需要が昨年よりも減速し、肥育豚価格は本年3月以降、ほぼ横ばいで推移している。
(注) 三菱UFJサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年6月末TTS相場。
AAFCによると、22年5月の豚と畜頭数は165万1000頭(前年同月比9.3%増)とかなりの程度増加した(図2)。一方で、カナダ西部ではと畜頭数が減少している。現地報道によると、カナダの主要養豚地域である中央マニトバ州の食肉処理場での深刻な労働力不足が要因であるとしている。その結果、同地域のと畜頭数は、同年1〜5月の累計で897万5000頭(前年同期比0.8%減)と前年同期をわずかに下回っている。
豚肉輸出量、米国向けなどが増加も全体では減少傾向で推移
カナダ統計局(Statistics Canada)によると、2022年4月の豚肉輸出量は9万3100トン(前年同月比11.8%減)とかなり大きく減少し、昨年の5月以降、ほぼ一貫して減少基調にある(表)。
輸出先別に見ると、主要輸出先である中国向けは、9200トン(同71.3%減)と前年同月実績の3分の1以下まで減少している。これは、主に中国国内の豚肉生産の回復によるものとされている。一方、米国向けは、同国内で豚肉価格が高騰している中で、夏場に向けた需要から2万9000トン(同38.1%増)と大幅に増加した。また、日本向けも1万8900トン(同2.2%増)とわずかに増加している。さらに、フィリピン向けも旺盛な国内需要が続いていることで、1万4500トン(同14.2%増)とかなり大きく増加した。現地報道によると、フィリピンではアフリカ豚熱による国内での豚肉不足への対処として輸入関税の引き下げが本年末まで続くとされており、今後も同国への輸出量は高水準で推移するとみられる。
(調査情報部 伊藤 瑞基)