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海外の需給動向【豚肉/中国】 畜産の情報 2022年8月号

豚肉価格は上昇に転じるもいまだ低水準で推移

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繁殖雌豚頭数は前年から縮小傾向

 中国農業農村部によると、2022年5月末時点の繁殖雌豚頭数は前年同月比8.1%減、前月比0.4%増の4192万頭となった(図1)。今後の肥育豚飼養頭数を左右する繁殖雌豚頭数は、22年4月以降はわずかに増加しているものの、ピークとなった前年よりも飼養規模は縮小している。なお、同部が最適な繁殖雌豚頭数としている約4100万頭と比較すると、現在の規模は2.2%上回っている状況にある。


 

豚と畜頭数は引き続き高水準で推移

 中国農業農村部によると、豚と畜頭数は引き続き前年同月を上回る水準で推移している(図2)。2022年5月のと畜頭数は2530万頭(前年同月比26.8%増)、1〜5月の累計では1万2274万頭(前年同期比41.3%)となり、21年5月以降、おおむねコロナ禍以前の水準(17〜19年平均)を上回って推移している。

 

豚肉や子豚価格は上昇に転じるも、依然として経営は赤字

 2022年1月以降、豚肉価格および子豚価格は下落傾向にあったものの、豚肉価格は5月、子豚価格は4月にそれぞれ上昇に転じている。5月の豚肉価格は前月比8.9%高の1キログラム当たり25元(517円:1元=20.68円(注1))、子豚価格は同22.4%高の同31.6元(653円)となった(図3)。中国政府は、豚肉価格および生体豚価格を下支えするため、3月以降、国家備蓄による豚肉の買い入れを複数回実施しており、最近では6月24日に4万トンの買い入れが実施されている。中国国家発展改革委員会によると、養豚生産者の経営状況の指標の一つである豚/穀物比は少しずつ回復に向かっており(注2)、6月22日には5.78:1と第2級警報および第3級警報水準である5:1台に改善している。なお、5月の生産者の豚1頭当たり損失額は84元(1737円)とされており、前月から153元(3164円)縮小しているものの、依然として赤字経営の状況が続いている。

(注1) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年6月末TTS相場。
(注2) 海外情報「豚肉価格低迷で国家備蓄による買入・保管を再度実施(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003064.html)および「生体豚価格改善も引き続き豚肉の国家買入を実施(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003269.html)を参照されたい。

 

2022年1〜5月の豚肉輸入量は引き続き大幅減

 2022年1〜5月の豚肉輸入量は、前年同期比64.5%減(67万6309トン)と大幅に減少した(表)。アフリカ豚熱の影響から輸入豚肉の需要が大きかった昨年に比べ、中国国内の豚肉生産が回復したことから豚肉価格が低迷するなど需給は大きく緩和している。これに加え、COVID−19による検疫の強化や上海など一部都市のロックダウンによる業務用を中心とした需要の減少、流通への影響もあり、主要輸入先からの豚肉輸入量は総じて前年を下回っている。

(調査情報部 海老沼 一出)