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海外の需給動向【牛乳・乳製品/豪州】 畜産の情報 2022年8月号

乳価は好調も、生乳生産量は低迷

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生乳生産量は引き続き低調

 デーリー・オーストラリア(DA)によると、2022年4月の生乳生産量は全州で減少したことにより、58万3294キロリットル(60万793トン相当、前年同月比6.6%減)とかなりの程度減少した(図1)。この結果、2021/22年度(7月〜翌6月)4月までの累計も、730万1829キロリットル(752万884トン相当、前年同期比3.4%減)とやや減少した。豪州の生乳生産量は、飼養頭数の減少などから、21年6月以降、前年同月を下回って推移している。


 このような状況を受けてDAは22年5月、今年度の生乳生産量見込みを22年3月時点見込みからさらに引き下げ(注1)、前年度比3.5%減の857万キロリットル(883万トン相当)とした。なお、22/23年度の生乳生産量については、好ましい気象条件や高い乳価などのプラス要因はあるものの、労働力不足や堅調な牛肉価格などが酪農家の離農や乳牛飼養頭数の減少につながることなどから、855万キロリットル(881万トン相当、同0.2%減)と「安定的に」推移すると予測している。

(注1) DAの2021/22年度生乳生産量見込みは、年度開始直前の21年6月時点では前年度比0〜2%増と見込んでいたが、22年3月には同1〜3%減の859万〜877万リットル(885万〜903万トン相当)と下方修正していた。
 

22/23年度乳価、歴史的高値でスタート

 2022年6月1日に公表された22/23年度の当初乳価(注2)は、主要乳業各社ともに前年度の当初乳価をおおよそ1〜2割上回る高値となった(注3)。その後も一定の乳量を確保したい各社の思惑から値上げ競争が行われ、新年度開始日となる7月1日時点では、豪州乳業最大手のサプート・デイリーオーストラリア社の生乳の固形分(注4)1キログラム当たり9.40豪ドル(901円:1豪ドル=95.90円(注5))など、いずれも歴史的高価を提示している。

(注2) 年度当初に乳業各社などが設定する生産者支払乳価の最低価格。「酪農業界における行動規範(Dairy code of conduct)」に基づき、毎年6月1日までの公表が義務付けられている。
(注3) 詳細は、海外情報「2022/23年度の当初乳価は記録的な高値(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003273.html)を参照されたい。
(注4) 乳脂肪分および乳たんぱく質。
(注5) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年6月末TTS相場。

 

主要乳製品4品目、中国向け輸出はいずれも振るわず

 DAが発表した2022年4月の主要乳製品4品目の輸出量は、脱脂粉乳および全粉乳については、最大の輸出先である中国向け輸出が減少したものの、クウェートや、タイ、インドネシアなどのアジア向け輸出の伸びなどを受け、いずれも増加した(表、図2)。バターおよびバターオイルは、主要輸出先である中国や韓国向け輸出の不振を受け、大幅に減少した。また、チーズは、最大の輸出先である日本や中国向け輸出の減少を受け、大幅に減少した。
 中国は、豪州にとって主要乳製品輸出先の一つであるが、中国国内での生乳生産量の増加やCOVID−19に起因する需要低下、乳製品国際価格の高騰などにより、乳製品輸入量が減少傾向にあるという(注6)

(注6) 『畜産の情報』2022年7月号「生乳生産量は増加、乳製品輸入量は大幅減」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_002270.html)を参照されたい。


 

 
(調査情報部 阿南 小有里)