(1)食肉加工品摂取への意識
子どもにハムやソーセージなどの食肉加工品を食べさせることへの意識を調査したところ、取り入れたい(「積極的に取り入れたい」「毎食ではないが、まあ取り入れたいと思う」)と回答した者が、全体としては約7割となった(図1)。最もその割合が高かったのが豪州(73%)であり、次いでドイツ(72%)、米国(69%)と続き、最も低いのは日本(64%)であった。
一方で、取り入れたくない(「できれば取り入れたくない」「絶対取り入れたくない」)と回答した者は、各国ともあまり高くはなく、最も割合が高かったのが米国(26%)となり、豪州(26%)、ドイツ(25%)、日本(24%)となった。また、日本は「どちらでもない・気にしていない」と回答した者が11%と他国に比べやや高かった。
次に取り入れたいと回答者にその理由を調査した(図2)。日本、米国、豪州で「あると便利だから・簡単に1品増やせるから」と回答した者が最も多かったのに対し、ドイツは「自分が好きだから・おいしいと思うから」と回答した者が最も多かった。また、米国、ドイツ、豪州は「子どもに必要な栄養素を手軽にとれるから」と回答した者が次に多かった。
一方で、取り入れたくないと回答した者にもその理由を調査した(図3)。日本、米国、ドイツは「添加物を含む食品を子どもに食べさせたくないから」と回答した者が最も多く、中でも日本(155人)は米国(109人)、ドイツ(82人)と比べその数が突出した。また、各国とも塩分・脂肪分を気にしている回答者も多く、米国およびドイツ、豪州では「加工されていない食肉を食べさせたい」と回答した者も一定数あった。
(2)食肉加工品摂取の頻度
実際に子どもが食べている頻度について、食肉加工品を取り入れたいと考えている者と取り入れたくないと考えている者に分けて、その結果をまとめた(図4、5)。
取り入れたいと考えている者の回答結果を見ると、「毎食必ず」から「月に1回程度」までと頻度にばらつきがあったが、全体的には週に1回以上取り入れているという結果になった。また、国別で見るとドイツは、「毎食必ず」「1日に1回程度」「週に3〜5回程度」が約9割を占める結果となった。次に「週に3〜5回程度」まで取り入れている割合が多いのが豪州となり、米国がそれに続いた。日本は同レベルの頻度では唯一5割を下回り、他国と比べ食肉加工品摂取の頻度が低いことが分かる。
他方で、取り入れたくないと考えている者は、日本が「週に1回程度」「月に数回程度」の割合が5割弱と高く、「月に数回程度」までを加えると8割を超えた。ドイツも「月に数回程度」まで食べている者で8割を超えているが、同国は日本に比べると「1日に1回程度」「週に3〜5回程度」としている者の割合が高く、全体として食べている頻度が多いことがうかがえる。
また、米国および豪州では、「半年に数回程度」「年に数回程度」「ほとんど食べていない」「一切食べていない」の割合が3割を超えており、取り入れたくないという母親の考えが、日本、ドイツに比べ、より反映されていると考えられる。
(3)食肉加工品摂取の実態
子どもの食事に取り入れたくないと考えているが、実際は月に数回以上食べている者にその理由を調査した(図6)。ドイツ以外の国では、「あると便利だから・簡単に1品増やせるから」という理由が最も多かった。
一方でドイツは、「自分が好きだから・おいしいと思うから」という理由が多く、「学校給食や外食など家庭以外の場で提供されていると思うから」「子どもに必要な栄養素を手軽にとれるから」と続き、「あると便利だから・簡単に1品増やせるから」という理由が全318回答中33回答であった。ドイツでは、家庭以外の場で提供される機会が多く、ソーセージなどが食生活の中で大きな位置を占めていることが要因として考えられる。なお、回答数としては少ないが、子どもに取り入れたいと考えているが、実際は半年に数回程度以下しか食べていない者の理由としては「子どもが(食肉加工品を)嫌いだから」という回答が最も多かった(図7)。
(4)摂取を避けている食肉加工品
ハムやソーセージ、ベーコンなどの食肉加工品の中で、特に食べるのを避けている加工品の有無について調査した(図8)。日本および豪州は「特にない」という回答が突出しているのに対し、ドイツはいずれかの食肉加工品を避けているという回答が8割を超えた。特に「ベーコン」を避けていると回答した者が多いことが特徴的である。また、食べるのを避けている理由を調査したところ、「他の加工品と比べ、塩分が気になるから」「他の加工品と比べ、脂肪分が気になるから」という回答が多い日本に対し、米国、ドイツ、豪州は「子ども自身が嫌いだから」という回答が最も多かった(図9)。特に「ベーコン」を避けているという回答が多かったドイツは、「子どもが嫌いだから」と回答した者が400人を超え、これは他国に比べ大幅に多かった)。
(5)食肉加工品の調査結果
このように、食肉加工品に対する意識と実態について国別の傾向を見ると、日本は「あると便利だから・簡単に1品増やせるから」という理由で、子どもの食事などに取り入れている傾向があると言える。ただし、添加物や塩分・脂肪分などを気にするとの回答もあり、結果として食べさせてはいるものの、他国に比べその頻度は少ない傾向が見られた。
米国と豪州については、「取り入れたくない」と考えている母親の意識がある程度反映されていると想定できるが、食べている理由として、日本同様「あると便利だから・簡単に1品増やせるから」という理由も多く、これは食の志向性として「ホームクッキングを重視した食生活」と回答した者が多いことも関連している可能性がある(参考-図4(後掲))。
また、ドイツは、他国に比べて食べている頻度も高く、また取り入れたくはないものの実際食べている者の理由の中で、家庭以外の場での提供が多いと回答している者が多いことから、食生活にソーセージが浸透しているという食文化も背景にあると考えられる。
(6)属性から見た食肉加工品摂取意向の傾向
ア 世代別傾向
食肉加工品摂取意向の傾向について、母親の世代別に国別で調査した(図10〜16)。日本は世代が上がるほど取り入れたいと考えている者の割合が多い。ただし、若い世代で取り入れたくないと考える者が他国と比べて多いわけではなく、「どちらでもない、気にしていない」と回答している者が多いことが特徴的である(図10)。
米国では、20代の世代で積極的に取り入れたいと回答する者が他の世代よりも多く、世代が上がる40代では、これとは逆に取り入れたくないと回答する者が多いという特徴となった(図11)。取り入れたい者の理由を世代別に見ると、20代の母親は、「子どもに必要な栄養素を手軽にとれるから」、「形状や硬さなど子どもが食べやすいから」、「パッケージにキャラクターなどが描かれ、子ども向けに作られたものがあり、子どもが好きだから」と回答した者の割合が他の世代よりも多かった(図12)。
一方で、取り入れたくない者の理由を世代別に見ると、40代の母親は「添加物を含む食品を子どもに与えたくないから」と回答した割合が、他の世代に比べて多かった(図13)。
ドイツは、世代が上がるにつれて「食肉加工品を取り入れたい」と回答する者が減少し、取り入れたくないと回答する者が多くなった(図14)。特に40代で「できれば取り入れたくない」と回答する者が増えている。40代の取り入れたくない者の理由については、「塩分・脂肪分が気になるから」「自分が嫌いだから、おいしいと思わないから」とした割合が、他の世代よりも多かった(図15)。
豪州については、世代間による差は他の国と比べ少ない結果となっている(図16)。
イ 就業形態から見た傾向
食肉加工品を取り入れたいかについて、4カ国全体における母親の就業形態から調査した結果が図17である。形態の母数に差があるため単純に比較することはできないが、「フルタイムで働いている」、「育児休暇中である」、「学生」の者が取り入れたいと考えている割合が高い傾向にある。図2から取り入れたいと考えている者の理由として、「あると便利だから・簡単に1品増やせるから」「子どもに必要な栄養素を手軽にとれるから」と時間や効率性を重視しているためと考えられる。ただし、参考-図4(後掲)で示した食の志向性では、日本はこれを重視しているという回答が少なかったにもかかわらず、取り入れたいと考えている理由として「あると便利だから・簡単に1品増やせるから」という理由が多いという乖離が見られた。なお、就業形態が「学生」の者で積極的に取り入れたいと回答している割合が高い理由は、母数55人のうち38人が20代であり、米国の20代の母親の積極的回答(33人)が含まれていることが大きい。