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海外の需給動向【牛肉/豪州】 畜産の情報 2022年9月号

牛肉輸出量、低迷も2カ月連続で前年同月比増

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肉牛取引価格は引き続き下落傾向で推移

 肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2022年7月も下落傾向が継続し、同月26日時点で1キログラム当たり892豪セント(858円:1豪ドル=96.20円(注1))と、21年5月以来の同900豪セントを下回る水準となった(図)。
 現地報道によると、この急激な下落は、インドネシアで発生している口蹄疫の豪州国内への侵入に対する懸念のほか、穀物価格の上昇が肥育業者の肉牛購買意欲を鈍化させていること、また、労働力不足を背景とした食肉処理に関する懸念なども影響しているとしている。さらに、同価格はクイーンズランド州で特に下落幅が顕著であり、これはインドネシア向けを中心とした生体牛輸出の落ち込みが関係しているとしている。
 他方で豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、昨今の多雨により家畜市場に供給される肉牛の品質にばらつきがあることや、食肉処理施設における従業員のCOVID-19やインフルエンザによる欠勤を含めた労働力不足が、肉牛価格の下落に影響しているとしている。

(注1) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年7月末TTS相場。

 

牛肉輸出量は米国を除く主要国で前年同月比増

 豪州農林水産省(DAFF)(注2)によると、2022年6月の牛肉輸出量は7万9553トン(前年同月比8.2%増)とかなりの程度増加し、2カ月連続で前年同月を上回ったものの、依然として低い水準で推移している(表)。この要因について現地報道では、これまでと同じく、コンテナ確保などの物流に関する課題や労働力不足を背景に食肉処理施設の稼働率が低いことなどが挙げられている。
 輸出先別に見ると、最大の輸出先である日本向けは2万2508トン(同7.2%増)とかなりの程度増加しているが、22年上半期(1〜6月)の累計では10万8510トン(前年同期比3.0%減)とやや減少している。
 中国向けは1万3956トン(前年同月比18.6%増)と大幅に増加しており、1〜6月の累計でも7万3078トン(前年同期比1.3%増)とわずかに増加している。一方で現地報道によると、中国市場で優位にあった豪州産牛肉は南米産の安価な牛肉に押されており、米国産については豪州産の市場シェアを抜いたとされている。

(注2) 22年7月1日から、従前の豪州農業・水・環境省(DAWE)はエネルギー部門を統合した上で、農林水産省(DAFF)と気候変動・エネルギー・環境・水省(DCCEEW)に再編されている。詳細は、海外情報「新政権、バイオセキュリティなどの農業政策に着手(豪州)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003309.html)を参照されたい。


 
(調査情報部 国際調査グループ)