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海外の需給動向【豚肉/ブラジル】 畜産の情報 2022年9月号

2021年の豚肉輸出量は4年連続の増加、22年は減少傾向で推移

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2021年の豚肉生産量、堅調な需要を背景に前年に続き増加

 ブラジル地理統計院(IBGE)によると、2021年のブラジルの豚肉生産量は489万1000トン(前年比9.1%増)と前年をかなりの程度上回った(図1)。これは、中国でのアフリカ豚熱発生に伴う減産分を補うため、ブラジルからの輸入需要が発生したことや、20年以降、生体豚および豚肉価格が上昇し、その後も高水準で推移したことなどから生産者の増頭意欲が高まったためである(図2)。さらに、COVID-19の影響による経済状況の悪化に伴い、国内市場では牛肉よりも安価な豚肉や鶏肉などに需要がシフトしたことも生産量の増加を後押しした。

 
 
 22年1〜3月の豚肉生産量は、124万4000トン(前年同期比6.8%増)と前年同期をかなりの程度上回った。また、豚と畜頭数は、1364万2000頭(同7.2%増)と統計を開始した97年以降、同期間で最多となった。
 ただし、堅調な需要を背景に増産傾向が続く一方で、生産者の経営は豚肉生産コストの約8割を占める飼料価格の上昇により収益性が低下している。
 

2021年豚肉輸出量、初の100万トン超え

 ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2021年の豚肉輸出量(冷蔵・冷凍)は、101万5174トン(前年比12.7%増)と4年連続で増加し、初めて100万トンを超えた(図3)。海外からの堅調な需要に加え、米ドルに対するレアル安の為替水準もプラスに働いた。
 輸出先別に見ると、近年輸出が急増し全体の約5割を占める中国向けは、51万830トン(同2.6%増)とわずかな増加にとどまった。同国向けは、アフリカ豚熱に伴う減産分を補うための輸入需要により増加傾向で推移したが、21年後半に入り豚飼養頭数の回復に伴い豚肉需給が緩和したため、後半の輸出量は減少した。その一方で、チリ(同38.4%増)、アルゼンチン(同90.8%増)、フィリピン(同7.4倍)向けなどが大幅に増加した。
 22年1〜6月の豚肉輸出量は、45万8091トン(前年同期比8.4%減)とこれまでの増加傾向から一転して前年同期をかなりの程度下回った。これは、これまでブラジルの豚肉輸出をけん引していた中国向けが、豚肉需給の緩和に伴い17万1897トン(同40.0%減)と大幅に減少したためである。中国向け輸出の減少が顕著となる一方で、シンガポール(同44.0%増)、ベトナム(同28.3%増)、アルゼンチン(同74.8%増)向けなど中国以外の地域への輸出が増加している。この結果、同期間の輸出量に占める中国向けの割合は37.5%となり、前年同期(57.3%)から19.8ポイント低下した。
 

(調査情報部 井田 俊二)