生乳生産量、8カ月ぶりに前年同月を上回る
米国農務省農場サービス局(USDA/FSA)によると、2022年6月の全米平均総合乳価は、生乳100ポンド当たり26.9米ドル(1キログラム当たり80.42円:1米ドル=135.61円
(注1)、前年同月比46.2%高)となり、先月からわずかに下落したものの、高水準で推移している(図1)。また、飼料費も上昇する中で、それを上回る乳価水準にあることから、同月の酪農マージン
(注2)は前年同月比97.7%増の同11.92米ドル(同35.64円)と拡大している。
(注1) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2022年7月末TTS相場。
(注2) 酪農家のセーフティーネット制度である酪農マージン保障プログラム(DMC)で算定される全米平均総合乳価と飼料費の差額としての収益。DMCでは、酪農マージンが発動基準を下回った場合、補填が発動される。
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)によると、22年6月の乳用経産牛飼養頭数は、前年同月比0.8%減の942万3000頭と9カ月連続で前年同月を下回った(図2)。しかしながら、22年1月以降は増加傾向で推移しており、1頭当たりの乳量も増加したため、6月の生乳生産量は860万7000トン(同0.2%増)と、8カ月ぶりに前年同月を上回った(図3)。国内外の需要を背景に乳価が高騰していることが経産牛頭数および生乳生産量の増加につながったとみられるが、飼料費に加えて燃料費や人件費などの生産コストも上昇しているため、さらなる拡大は限定的になると思われる。
チーズの輸出が好調
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2022年5月の乳製品輸出量は、バターや脱脂粉乳が前年同月比で減少したものの、チーズの大幅な伸びから乳製品全体としては好調に推移し、5月の輸出量としては過去最大を記録した(表)。
品目別に見ると、チーズは日本、韓国、メキシコ向けの輸出量が増加した。米国乳製品輸出協会(USDEC)によると、世界的な生乳生産量の減少により、欧州およびNZからのチーズ供給量が減少する中で、米国産の需要が増加したものとしている。また、隣国メキシコや中米のチーズ需要が大きいことも一因としている。ただし、米ドル高で推移する為替相場を背景に、ここ数カ月維持してきた米国産の価格優位性が弱まってきており、今後の動向が注視されている。
一方、主要輸出製品である脱脂粉乳の輸出量は減少している。USDECによると、これは輸出需要の減退ではなく米国内の供給不足が要因としており、脱脂粉乳やバターに仕向けられる生乳の割合が増えるまでの間は、輸出量の増加は見込めないとしている。
(調査情報部 上村 照子)