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海外の需給動向【牛乳・乳製品/EU】 畜産の情報 2022年9月号

生乳取引価格は引き続き過去最高値を更新

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5月の生乳出荷量、前年同月比1.4%減

 欧州委員会によると、2022年5月の生乳出荷量(EU27カ国)は、1318万9660トン(前年同月比1.4%減)と前年同月をわずかに下回った(図1、表)。
 
 


  同月の生乳出荷量を国別に見ると、ベルギー(同0.9%増)がわずかに増加、ポーランド(同0.0%増)が前年同月並みとなった一方で、出荷量上位3カ国のドイツ(同1.8%減)、フランス(同1.9%減)、オランダ(同0.8%減)をはじめ、その他の国でいずれも前年同月をやや下回った。
 欧州委員会が7月7日に公表した農畜産物の短期的需給見通しでは、春先の高温で乾燥した気候が経産牛にストレスを与えたことや、熱波の影響による牧草の生育不良や飼料穀物価格の高騰が牛群の縮小につながることを挙げており、通年での生乳出荷量は前年比0.6%減と見込まれている。
 また、牧草の質の低下や飼料穀物給与量の減少による乳脂肪と乳タンパク質含有量の減少も見込まれており、チーズやバター生産に影響を及ぼすとされている。
 

高騰する生乳取引価格

 2022年6月の生乳取引価格(EU27カ国の平均)は、100キログラム当たり48.83ユーロ(6775円:1ユーロ=138.75円(注)、前年同月比36.5%高)と16カ月連続で前年同月を上回った(図2)。

 
 欧州委員会によると、乳製品需要が好調を維持する中で、今後も高止まり傾向が続くと見込まれている。一方で、生乳取引価格は高騰しているものの、飼料費など資材費の高騰により生産者の収益は依然として厳しい状況にある。

(注) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2022年7月末TTS相場。
 

乳製品価格は引き続き上昇傾向

 生乳取引価格の上昇をけん引する直近7月17日の週の乳製品価格は、バターが100キログラム当たり720ユーロ(9万9900円)、脱脂粉乳が同389ユーロ(5万3974円)、全粉乳が同511ユーロ(7万901円)といずれも上昇もしくは高値で推移している(図3)。中でもバターの価格は、脱脂粉乳や全粉乳と異なり上昇を継続しており、オセアニア産の同価格を30%以上も上回っている。
 欧州委員会によると、バター、脱脂粉乳、全粉乳の価格高騰の要因として、生乳出荷量が減少する中でチーズ生産が優先されるため、これらに仕向けられる生乳が減少していることが挙げられている。
 

 
(調査情報部 渡辺 淳一)